日本ラグビーの進化はデータが証明していた。南アフリカを破りながら決勝トーナメント進出を逃した前回15年W杯と4戦全勝で1位突破を決めた今大会。

1次リーグの数字を比較して変化と成長を探った。ラグビーなどスポーツのデータ解析を行う「データスタジアム」の豊富な情報をもとに、同社ラグビーアナリストの小川孝明氏(35)に聞いた。(聞き手=荻島弘一)

   ◇   ◇   ◇

-前回大会の1次リーグ4試合と比べ、今大会で目立つデータはありますか

小川 ディフェンスではタックル成功率ですね。スコットランド戦で86・1%とやや落としましたが、4試合の平均で今大会は91・5%。前回の85・9%を上回っています。相手を止められているんです。

-成功率向上には、何か要因があるのでしょうか

小川 狙うところが、変わっています。前回は4分の1近くが脚にいっています。下半身を狙うことが多かったですね。ところが、今回は60%近くが胸で、脚は3%だけ。上半身を狙うとターゲットも大きいので成功率も上がります。

-日本は低いタックルが持ち味でしたが

小川 確かに小さな選手が大きな相手を倒すのには有効です。上半身だとパワーの差ではじかれるリスクもありますから。ただ、かわされる可能性も高い。日本選手の個々の能力が上がってパワー負けしないようになったので、上半身に行けるようになったんです。

-ボールに行くというのは鉄則でもありますね

小川 下半身を止めても上半身がフリーだとボールをつながれてしまう。オフロードパス(タックルを受けながらのパス)のスキルも上がっていますから。今回はボールを殺しているので、つながれるオフロードパスが半減しました。

-オフェンスでは、特徴的なことはありますか

小川 ボールを持って前進するキャリー距離が伸びています。1試合平均で600・5メートルだったのが、751・8メートルまでになっています。1キャリーの平均獲得距離も5・4メートルから6・8メートルに伸びました。

-個々の推進力が伸びたということですね

小川 もちろん、それもあります。あとは、攻撃チャンネルの変化。どこを攻めるかです。ラック周辺、SO周辺、CTB周辺、外まで展開、ブラインド(狭いサイド)と5つに分けて攻撃データをみると、劇的な変化が分かります。

-今回は大きく外に展開することが多いですね

小川 そうなんです。実は前回大会で外まで展開したのは2・2%。CTB周辺からの攻めを合わせても8%程度です。ところが、今回は外が11・2%。CTBを合わせると20%近くになります。前回はラック周辺で連続攻撃した。今回は大きく外に振る。松島や福岡のトライも増えます。

-それも、個々の能力がアップしたからですか

小川 ヒートマップ(選手のプレー位置)を見ると一目瞭然で、前回はポイント周辺に多くの選手を配していた。今回はポイント周辺に人数をかけず、外に開いている。少ない人数でも相手に対応できるようになった。個々のパワー向上が戦い方にでています。

-前回は、個々の能力に合った戦い方だったと

小川 メンバーも変わっているし、体格やパワーは4年前よりも間違いなく上がっています。前回大会のエディー(・ジョーンズヘッドコーチ)さんは、あの時点でベストな戦い方をした。それが、今の躍進につながったといえます。

-4年間の進化を踏まえて、データから南アフリカ戦を占ってください

小川 正直言って、1次リーグのデータではほとんど南アフリカが上回っています。ラインアウトなど100%ですから。でも、試合はやってみないと。ホームの利もありますから。勝ってベスト4に進出することを期待しています。