<水泳世界選手権:競泳>◇24日◇上海

 日本競泳界の「キング」北島康介(28=日本コカ・コーラ)が、男子100メートル平泳ぎ準決勝を59秒77で2位通過し、順当に決勝に進んだ。予選、準決勝のトップ通過はアレクサンダー・ダーレオーエン(26=ノルウェー)に譲ったが、これは08年北京五輪で金メダルに輝いた時と同じ勝ち上がりパターン。予選から全力で泳ぐライバルに対し、決勝に向けて調子を上向かせていくのが北島流。今日25日の決勝へ「一発勝負をかけにいきたい」と高らかに宣言。頭に描く北京五輪の再現で、ロンドン切符をつかみにかかる。

 北島はあわてなかった。前半50メートルを6番手の28秒27でターン。トップを行く隣のダーレオーエンとは0・35秒差。そこから粘り強く追い込んだ。ストローク数は前半の17回から後半は21回へ。誰よりも少ない「かき」で、最後は2位で突っ込んだ。予選の全体3位通過から1つ順位を上げ、3年ぶりの国際舞台で決勝進出。安堵(あんど)の表情が浮かんだ。

 北島

 合わなかったね。まとまったいい泳ぎができていない。もうちょっとかき込んで、意識して(予選から)修正したつもりだけど、いい面も悪い面も出た。簡単に勝たしてくれないね。

 ダーレオーエンの59秒37は今季世界最高記録。4月の代表選考会での北島の59秒44を上回った。決勝も2人の一騎打ちになる。北京五輪でも予選、準決勝とダーレオーエンが五輪新記録を連発してトップ通過。しかし、北島は決勝で世界新記録で金メダルに輝いた。相手の出方を見きわめて、自らのピークを合わせた結果だった。今回は水の抵抗を受けるあごひげを蓄えての出場。余裕を残しながらの59秒台は、一発逆転の期待を膨らませる。

 ダーレオーエンとはライバルであり、良き親友だ。北京五輪からお互いを認め合い、親交が深まった。一昨年11月に来日した際には北島の原点「東京スイミングセンター」で一緒に練習したほど。メル友であり、親しみを込めて「アレックス」と呼ぶ。そんなダーレオーエンは今回、母国への思いを背負って泳ぐ。

 22日にノルウェーで起きたテロ事件。テレビ取材を受けると、「そんなタフな質問には答えられない」と涙をぬぐった。対する北島も東日本大震災で傷ついた日本に勇気を与えるべく、戦っている。より高まるライバル対決。同じ中国の上海で、北京の再現なるか。

 北島

 彼、力持ってるよ。強敵だと思うよ。メンタルも据わってるしね。比較するのは悪いけどまた(かつての宿敵)ハンセンと違った相手だからね、やりづらいっちゃあ、やりづらい。心のスキがねえよ。明日は一発勝負かけにいきます。

 ロンドン行きをかけ、北島の闘志に再び火がついた。【佐藤隆志】