<都市対抗野球・1次予選岩手県大会:フェズント岩手5-2JR盛岡>◇15日◇決勝◇岩手県営野球場

 不景気を吹き飛ばす結束力だ!

 決勝でフェズント岩手(盛岡市)が5-2でJR盛岡(盛岡市)を破り、2年連続2度目の優勝を果たした。主将の渡辺潤也一塁手(26=東農大生産学部)が3安打2打点1得点。不況の荒波を乗り越え、27日開幕の2次予選東北大会(秋田市)で初の本戦出場を目指す。2位決定戦はJR盛岡が4-1で高田クラブ(陸前高田市)を下し、2次予選進出を決めた。

 黄と赤の派手なユニホームが入り乱れた。県鳥のキジと岩手山をあしらった、スタンドの旗のロゴマークも誇らしげにたなびいた。大黒柱の奮起に触発されたフェズント岩手が、一丸となって接戦を制した。

 3-2の7回。2死一、三塁のチャンスで、4番渡辺の痛烈な打球は左翼線を貫いた。適時二塁打でリードを2点に広げ、勝利をぐっと引き寄せる一打。拳を突き上げた主砲の姿に、ベンチのナインも雄たけびを上げて呼応した。3回にも中前適時打を放った渡辺は2打点。準決勝までは1打点も挙げられなかっただけに、仲間には笑顔で「いいとこ取りでゴメン!」と頭を下げた。

 地元岩手の企業10社に所属する選手によって構成され、各企業の出資によって運営する広域複合企業チーム。明るい性格のムードメーカー渡辺だが、不況の影響で5月末で岩手トヨペットを退社し、現在無職だ。今年に入って渡辺を含む3人が仕事を失った。ホームグラウンドはなく、雫石球場で週2回のナイター練習。選手たちは自家用車で乗り合わせて通っている。

 そんな苦境を、野球ができる喜びで克服。連覇という形で、それを証明した。上位2チームが本戦に出場する東北大会に向けて、渡辺が「意地というか、チームの強さを見せたい」と意気込めば、松田修一監督(56)も「マスコミさんに取り上げてもらうことで、チームのすそ野を広げることができたら」。宣伝のためにも、全国舞台進出は最低目標だ。【由本裕貴】