メモを取る手が止まった。17日のDeNA戦(マツダスタジアム)。ミスが重なり9回に3点を追いつかれた試合だ。鈴木の痛恨の後逸について、河田外野守備走塁コーチに話を聞きにいったときだった。目を真っすぐ見て「オレはああいう教え方をしている。オレは誰がなんと言おうと曲げない」と言われた。いらついているわけでもなく、心底の言葉だと感じた。

 もちろんいいプレーではない。前方の打球にスライディングキャッチを試みるなら、最低でも体に当てなければならない状況。だがそれは素人に言われなくても百も承知だろう。ミスを恐れて前に出なければ就任当時から掲げる「ポテンヒットの撲滅」は出来ない。長い目で見て、鈴木を育てる上で取らなければならないリスク。打たれた今村は不運だが、チームがそれを共有出来ているのだ。

 翌日、緒方監督にも聞いた。「誠也は若いし、まだまだ経験しないといけない選手だからね。こっちもそう思っている。(河田コーチの言葉は)強い責任と愛情を持って指導してくれている証でしょう」。失敗と悔しさと愛情を受けて、どこまでも育っていく。【広島担当=池本泰尚】