早実(西東京)のスーパー1年生・清宮幸太郎内野手が、恩師の雪辱と少年との約束を果たす。高校野球100年の節目に行われる第97回全国高校野球選手権大会(甲子園)が今日6日、開幕する。5日は開会式のリハーサルが行われ、聖地を堂々と行進。兵庫・尼崎市内での練習では、8日の今治西(愛媛)との初戦に向けて快音を響かせた。

 因縁の相手を倒すため、清宮がバットを振り続けた。フリー打撃では今治西の右投手を想定して打撃投手相手に32球、マシンでも変化球だけを32球打ち込んだ。怪物ルーキーが場外ファウルを連発するため、通常の打席より約5メートル下げての練習でも柵越え2本。「(状態は)悪くない。暑いけど体調も大丈夫。バッチリです」と調整は順調だ。

 早実と今治西の対戦は、77年夏の準々決勝以来。くしくも和泉実監督(53)が清宮と同じ1年生で、初めて臨んだ甲子園だった。結果は1-11で完敗。和泉監督は「一生懸命スタンドで応援したけど、ボロ負けだった」と振り返る。

 38年の時を経て、早実野球部の歴史を変えたスラッガーがリベンジに挑む。和泉監督は「清宮は初等部から(進学してきた部員)の初めてのレギュラー。学校側としても期待している。今後の彼のためにも大切な大会」と言った。成長を阻まぬよう、大切に育てられてきた逸材も自覚は十分。「1年生でベンチに入れてもらっている。チームの勝利のために、任された役目を果たしたい」と力を込めた。

 少年からも思いを託された。練習後に「憧れの清宮選手を見に来た」という神戸市北区の田中隼人君(12)に「甲子園でホームランを打ってください」と握手を求められると、笑顔で応えた。26年のワールドシリーズで、当時ヤンキースのベーブ・ルースは病床の少年との約束を守り、本塁打を放った。「和製ベーブ・ルース」の異名を取る16歳が、夢と希望のアーチを架ける。【鹿野雄太】