大阪桐蔭(大阪)は静岡との打撃戦を制し、2年ぶりのベスト8を決めた。

 早実・清宮が去っても、甲子園には大阪桐蔭・根尾がいる。2点を追った8回の逆襲は、先頭・根尾の左前打から。逆転後の8、9回は、投手として無失点で締めた。それでも「甲子園は自分がやりたいこととは違う感じになってしまう。不思議なところです」と眉間にシワを寄せて、初めて踏んだ聖地のマウンドを降りた。ストイックな新ヒーローが誕生した。

 1回戦・宇部鴻城(山口)戦に続いて、遊撃で先発。4回表1死からブルペンに走った。ストッパーに西谷浩一監督(47)は根尾を指名。「任せて下さい、という顔をしていた」と同監督。互いに迷いはなかった。

 8回のマウンド。四球と安打で1死一、二塁。相手5番はフルカウントから高め直球を空振り。二塁走者の三盗を捕手の福井が封じ、併殺でピンチを断った。「ボール球を相手が振ってくれた。自分が抑えたわけじゃない」と自分に厳しい言葉が口をついたが、反撃は許さない。

 「昂(あきら)」の名は母実喜子さん(49)が命名。「もともと『(気持ちが)昂(たか)ぶる』という文字で使われていた。そこから来ています」と父浩さん(50)が語る。気持ちの強さは不動。中学時代の根尾を見た西谷監督は、一目で心をとらえられた。「あんなに目が輝いている子はいませんでした」と出会った日を振り返る。

 この日の試合を、OBの阪神藤浪が見ていた。12年のセンバツ準々決勝・浦和学院(埼玉)の劣勢の展開で救援し、藤浪は甲子園春夏連覇投手になった。根尾も投打で劣勢をはね返した。遊撃、三塁、外野も守る4刀流は「マウンドは、勝ちたいな、もっとやってやろうと思える場所」と胸を張った。先輩に続く道を、根尾が歩き始めた。【堀まどか】