<センバツ高校野球:城南8-5報徳学園>◇27日◇1回戦

 21世紀枠で春夏通じて初出場の城南(徳島)が報徳学園(兵庫)に勝利した。

 創部113年でつかんだ城南の甲子園初出場に初勝利の歴史を加えた。その扉をこじ開けたのが、エース竹内のバットだった。

 4回に先制。5回に4連打で追加点を加えても、伝統の粘りで報徳も食らい付いてくる。5-3で迎えた9回2死一、二塁。竹内が、報徳の好投手田村の浮いた初球の直球をフルスイングすると打球は、レフトスタンドに吸い込まれていった。「信じられない。ほんまかなと思った」と、夢見心地でダイヤモンドを回った。21世紀枠だが、1試合の平均得点が11・3点(9回換算)と、出場32校中トップの攻撃力はだてではなかった。

 「創部113年の甲子園なんてハレー彗星(すいせい)に出会ったようなもの」と口癖にように話していた森恭仁監督(43)だが、決して偶然でも幸運でもなかった。06年に母校に赴任。母校は1898年(明31)創部で徳島野球の発祥の地として知られていたが、県内屈指の進学校で甲子園とは無縁だった。「帰ってきた以上は強くしたい」と選手の意識改革から始めた。グラウンドは他部と兼用で使えるのは内野程度の広さしかなかった。約2メートルの竹ざおを使った素振りやタイヤを引いたままのノックなど環境に応じた練習を始めた。

 5回が終わり森監督はダッグアウトの前に選手を集めた。「スタンドを見てみろ。みんなお前たちを見てる。お前たちが主人公なんだ。勇気をもらって少しずつ前に出ろ」と奮い立たせた。報徳の反撃を抑えて勝利の瞬間には、3万人の観衆から惜しみない拍手が送られた。「この勝利は113年をつないできた先輩たちのおかげです」。母校の歴史に新たな1ページを加えて森監督は涙ぐんだ。【神田成史】