<高校野球春季北海道大会:札幌日大7-1札幌創成>◇11日◇札幌地区Dブロック1回戦◇野幌総合運動公園野球場

 孝行息子が「母の日」に、大きな1発をプレゼントした。春は3年連続の全道大会を目指す札幌日大が札幌創成を下して好発進した。投手から野手に転向した7番の山崎僚馬左翼手(2年)が1点を追う3回、母直子さん(51)が見守る中、公式戦初打席で同点アーチを放って鮮烈デビュー。打線を一気に勢いづけて、全員の11安打を放ち快勝した。

 左足を高く上げて、山崎は勢いよくバットを振り抜いた。札幌日大が1点ビハインドで迎えた3回、高校の公式戦、ファーストストライクは内角高めの直球だった。「こすり気味だったけど、とらえたかなと思いました」。両翼98メートルの左翼フェンスを軽々と超えた打球は、逆転勝ちを呼び込む同点弾。「ホームランボールは母にあげようかなって思っています。今日は母の日ですから」と照れ笑い。投手から野手へ転向したばかりの2年生が、公式戦初打席でどでかい仕事をやってのけた。

 右肩を痛めて、森本監督から野手専念の打診を受けたのは、昨秋の大会が始まる直前だった。「小学生の頃から打撃には自信があった。打撃にもっと集中しなくちゃいけない。チームにとって、自分は何が必要とされているかを考えました」。決断してからは、投手への思いを封印。今春、背番号7をつかみ取った。

 秘めたる思いがある。「大学へ行ったら、また投手をやろうと思っているんです」。09年に選ばれたファイターズジュニアでは、エースナンバーとされる背番号11をもらった。余市シニアではエースで4番として北海道を制し、全国大会に出場。日本ハム大谷のように、投手と野手の“二刀流”を極めたいと将来のビジョンを描くからこそ「多い日で1000回」バットを振る傍らで、自由時間を見つけては、投手としての練習も怠らない。

 実家のある余市町を離れて寮生活を送る。スタンドには駆けつけてくれた母直子さんの姿があった。「今までずっと(練習や試合の際に)送り迎えをしてくれたり、たくさんお金もかけてもらっているので…」。“リョウマ”の名に恥じないように「名前を残す選手になりたい」。まずは、高校時代に甲子園へ。より大きな親孝行で、恩返しするつもりだ。【中島宙恵】