その男、凶暴につき、だまされてはいけない。ある統計が表している。カウント別の通算打率。12種類のカウントがある。3ボールで10打数5安打の打率5割。少ないサンプルを除くと、2-0が80打数32安打で4割と最も高い。データの主は、巨人長野久義外野手(31)だ。
打者優位のカウントだ。投手は瀬戸際に追い込まれぬよう、ストライクを欲する。打者は空振り、ファウルでも2-1と再び有利に仕切り直せる。だが打ち損じれば一転、空虚さが残る。仕掛けるか、仕掛けないか-。積極的と自己中心的のギリギリの境に立つ。2ボールは打者の性格が出るといわれる。
長野ほど周囲に神経を払う男はいない。4月3日の広島戦。5回、客席にライナー性のファウルを放ち、行方をしばらく凝視した。6回の守備に向かう際にバットを手に客席へ向かい、ファンに手渡した。「年配の女性に当たったので申し訳ないなと」。試合中でも球場内360度を視野に入れる。
献身性を上回り、持ち味をのぞかせる瞬間が訪れた。初回2死。グリーンの「B」のランプが2つ光る。決して青信号ではない。長野の前では「止まれ」の赤信号だ。スコア0-0で通算25本塁打の超積極性が肉体を突き動かす。カウントを整えにきた小川のスライダーを左翼席へ。開幕2戦目で99号を放ち、節目に王手をかけながらノーアーチが続いた。「早く打ちたいですよ。だって各球場で花束を用意してくれているでしょう。申し訳なくて」。100号に達した打者長野は要注意、しかし人間長野は興味深い。【広重竜太郎】
▼通算100本塁打=長野(巨人) 14日のヤクルト6回戦(神宮)の1回、小川から今季3号を放ち達成。プロ野球276人目。初本塁打は10年4月4日の広島3回戦(マツダスタジアム)で小松から。



