ソフトバンク内川聖一外野手(33)が、熊本地震で被災したホークスファンを勇気づける1発で、チームを今季初の5連勝へと導いた。4回1死一、二塁のチャンスで、左中間への決勝2号3ラン。開幕から3連勝中の楽天則本に今季初黒星をつけ、お立ち台では涙を流して被災者を思いやった。これで首位ロッテとも1・5差。開幕スタートダッシュにはつまずいたが、定位置だった首位の座はもう目の前だ。

 震災の話を振られると、思わず涙があふれ出した。今季2度目のお立ち台。同じ九州の大分出身で、5日前に熊本で試合をしていた内川にとって、この日は負けるわけにはいかなかった。

 「ホークスは九州全体から応援してもらってやっている。僕ら野球選手は野球で皆さんを元気にすることしかできないが、野球を見ている間だけでも現実を忘れてもらえるように、全力でプレーしたい」

 4回1死一、二塁のチャンス。柳田が四球で歩いた直後の初球、真ん中に甘く入ったフォークをとらえた。則本は開幕から3連勝中のエース。この日もホークスが放ったヒットは2本だけ。だが、4番はこの日唯一ともいえる失投を逃さなかった。「少ないチャンスで打ててよかった。走者をかえせば何でもいいと思っていた。自分が一番ビックリ」と、目を丸くした。

 前日夜、福岡市内の自宅で携帯電話の緊急地震速報が鳴り響いた。「あれはドキッとさせられた」。福岡は震度4。被害はなかったが、3歳の長女は余震で何度も目を覚ました。知人からは「福岡は大丈夫か?」と安否を確認するメールが続々と入った。妻の翼さんはかつてフジテレビで報道に関わっていた。震災取材の話も聞いていた。しかも熊本では5日前に試合を行ったばかり。オフには震災被災地の福島県いわき市で野球教室も開催している。熊本地震は人ごとではなかった。

 お立ち台であふれ出した涙は止まらなかった。内川は「僕も1人の子供を持つ親として、子供を抱えながら避難されている皆さんの不安な思い、一生懸命生きようとしている皆さんの姿を見ていると、こういうことはあってほしくないのが本音。熊本はいつも満員で応援してもらっているし、元気になってほしかった」と、声を上ずらせた。

 工藤監督も「大きな災害が起きて、今日は勝ちたい気持ちだった。皆、思いを持って戦ってくれた」とナインをたたえた。チームの思いを束にして打った内川の1発。被災地への思いは確かに届いた。【福岡吉央】