16日ぶりの本拠地で、日本ハム打線がたまった鬱憤(うっぷん)を晴らした。今季3度目の零封負けから一夜明け、今季最多の13得点で快勝。負ければ単独最下位の可能性もあった一戦で、大勝を決定づけたのは、やや控えめな伏兵、高卒5年目の松本剛内野手(22)だった。

 3点を先行した2回1死満塁。松本は外角への初球を仕留めて、プロ初打点となる2点右前打を放つも、ガッツポーズはなし。「うれしい気持ちはあったけど、恥ずかしさもあって…」。込み上げるうれしさを冷静にかみしめた。流れをつないだ通算4本目の安打が、首位ロッテとの3連戦初戦を制する決定打となった。

 抜てきした栗山監督も「あいつの、ここまでの歩みを見ていれば分かるでしょ」と目を細めた。11年ドラフト2位で名門・帝京から入団。「ある意味、一緒に入団した選手」と、指揮官が監督に就任した12年からプロ人生はスタートした。将来の正遊撃手として期待されたが、1年目はイースタンでワーストの33失策。昨季から外野手兼任となり、「打撃でアピールしないと」と控えめな性格にも火が付いた。

 ドラフト同期で同学年の近藤、石川慎、上沢が先に1軍で活躍する姿に、悔しさもあった。昨季終了後には周囲に「後がないと思って頑張ります」と背水の陣を宣言。6回には中前打で初の1試合複数安打もマーク。今季最多タイの17安打を放った打線で輝いた苦労人に、栗山監督は「あいつの、がむしゃらさ、必死さがチームにいい影響を与えた」と賛辞を惜しまなかった。【木下大輔】