自画自賛の打球が松山の青空を切り裂いた。5回無死一塁、ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(31)は初球内角気味のストレートを迷わずに仕留めた。坊っちゃんスタジアムの左翼スタンド上段まで届く4号2ラン。リードを4点差に広げ「パーフェクトスイングができた」とご満悦だった。

 14日の巨人戦に続く、2戦連続アーチだ。「おとといより自分らしいホームラン」と日に日に手応えが増している。手本はバーチャルの自分。ゲーム好きで、移動時間や休日は野球ゲーム「プロ野球スピリッツ」をプレーしている。画面の中のバレンティンは絶好調だった。「20試合で30発くらい打っていた。当たり前だけど、何のプレッシャーも感じずにね」。

 気負わず打つこと。“もう1人のバレンティン”の背中を追いかけ、キャンプ中から打撃フォームを撮影、確認、と努力を重ねた。警戒され、1打席に1球程度しか打てる球はこない。打ち損じは減った。杉村チーフ打撃コーチは言う。「甘い球を逃さなくなった。60本打った時もそうだった」。プロ野球新記録を達成した13年の姿をほうふつとさせた。

 リラックスには多少の鈍感さも必要だ。前日深夜の地震は松山でも震度4を観測した。「映画を見ていた。日本も長いので、揺れにも慣れてきたよ」。必要以上に取り乱さず、冷静に休息の時間を取った。左翼守備でもファインプレーを見せ「秋季キャンプでやり慣れてるのが、数字に出てるのかもしれないね」。プレッシャーから解放された大砲は、攻守にのびのびしていた。【鎌田良美】