次こそ勝てる。阪神藤川球児投手(35)が20日ぶりの1軍復帰マウンドで奮闘した。援護に恵まれず敗戦投手になったものの、今季自己最長の6回2/3を投げて3安打1失点。最速146キロをマークするまで球威が回復し、古巣復帰後、最多の7三振も奪った。サタデー球児としてリスタート。甲子園で先発星をつかむ日は遠くない。

 先発球児がイメージチェンジして1軍に戻ってきた。初回から先頭関根を145キロで見逃し三振。続く石川の2球目ファウルはこの日最速の146キロを記録した。これまでの3試合では、試合中盤あたりから球威が落ちだし、変化球でかわす場面も目立った。この日は降板直前の7回にも145キロを計測。最後は2者連続四球で2死満塁としてマウンドを譲ったが、超満員の甲子園からは拍手が起こった。

 「ゲームは作れたと思う。今日はゲームを壊さないようにと思ってやった」

 バッテリーを組んだのは4月26日まで育成選手だった原口。手探り状態ではあったが、球種の偏りなくリードする後輩のサインに全力投球で応えた。ベンチの金本監督も「球児はね、一番良かったんじゃないか、今回。球も走っていたし」と、納得顔。まるで勝利投手に向けたコメントだった。

 「シーズンを送る上で(精度を)上げていかないといけない。徐々に上げていける状態というのは感じ取れている」

 藤川自ら口にした手応え。それは投球フォームだった。これまで走者がいない場面では振りかぶっていたが、すべてセットポジションに変更。リリースポイントが安定した。直球の球威だけではなく、フォークなど変化球の精度もアップ。それが最少失点という結果につながった。

 ブルペン入りのタイミングなど調整法は試行錯誤している真っ最中。4回1死一、二塁の場面では重盗を仕掛けられ、決勝犠飛につながってしまった。「作戦ですから、そういうこともある。1つ1つケアしていく」と前向きに話した。課題はある。ただしそのハードルを越える面白さがある。野球少年のような純真な気持ちで向かうマウンドに、白星は待っている。【桝井聡】