「恐怖の6番」がカープを首位に押し上げた。広島鈴木誠也外野手(21)が2安打3打点とまた打線を活性化させた。複数打点は今季4度目。5回2死一、二塁で、4回の適時失策を挽回する適時二塁打を放ち、今季初6連打の逆転劇につなげた。出場17試合で17打点の勝負強さが、首位に浮上したチームをさらに加速させる。

 ミスは必ず取り返す-。5回2死から連打で一、二塁となり、打席に立った鈴木の集中力は極限に達していた。初球のカーブに腰が引けた。ストライク。「もう1球来る」。狙い通り、ブレーキの利いた内角から入るカーブに迷わずバットを振り抜いた。左翼線ではねる適時二塁打に力強く拳を握った。意地のひと振りが反撃ムードを高めた。

 「割り切っていけた。みなさん打っているので、いい流れで入れている。思い切って打てました」

 同点の4回。失策から勝ち越しを許した。無死一塁からナニータの右前打に三塁送球を焦って、打球をつかみきれなかった。慌てて拾うも、一塁走者の生還を許した。「何とかしようと積極的に思い切っていきました」。失策後の打席で汚名を返上した。

 出場機会を増やした昨季は凡ミスが目立った。緒方監督からは「ものすごいことをしてくれるけど、何かをやらかす」と「一日一善くん」とも呼ばれた。今年1月にはソフトバンク内川に弟子入りし、打撃に磨きをかけた。昨季の苦い経験も、今季のハツラツとしたプレーにつながっている。昨季の開幕戦前夜は緒方監督から叱られる夢で目覚めたが、今季の1軍初出場前夜は深い眠りについた。

 1回に押し出し四球を選び、3回はチーム初安打となる適時打を放った。今季4度目の複数打点で、出場17試合で17打点。「恐怖の6番」として広島打線を活性化させている。鈴木の適時打で勢いづいた打線はその5回に逆転した。開幕4番のルナを欠き、この日はエルドレッドが大事を取ってスタメンを外れた。それでも3試合連続2桁安打で、2戦連続の2桁得点。中日に今季初の同一カード3連勝で貯金を5に増やし、首位に浮上した。打撃開眼を予感させる若き鈴木が、打線に厚みを生んでいる。【前原淳】