ミラクル男が甲子園に奇跡を呼んだ。阪神原口文仁捕手(24)が執念の一打で大逆転の起点になった。7回無死一、二塁。代打をコールされると、1ボールから2球目だ。DeNA山口の高め直球を振り抜いた。打球はふわりと舞い上がり左前に落ちた。

 「昨日はちょっと速い投手に振り負けていた。自分のスイングをしようとファーストストライクからという意識でした。タイミングは変えていないけど、意識を少し変えました」

 敗色濃厚ムードから背番号94が無死満塁を作り上げると、その後はもう押せ押せ。チャンステーマが鳴り響く中、2者連続の押し出し四球。そしてゴメスの同点タイムリー。4安打に3四球が絡み、10人攻撃の5得点。8回に大和の勝ち越し打が飛び出した。大爆発の火付け役は4日前に育成から支配下選手になった原口だ。

 野球の神様はさらなるチャンスを与える。8回には須田の初球直球を中前に運び、プロ初のマルチ安打。マスクをかぶっても「平常心でいけた」と、終盤の2イニングを無失点リードで乗り切った。

 「日に日に落ち着いてはきていると思います。(ヒットは)2本とも当たりは詰まっていたけど、いいポイントで打てた」

 マジメな男のシンデレラ物語。甲子園に原口を呼び寄せた金本監督は、舞台に立つまでの準備を絶賛する。「トレーニングして体も鍛えて、バットも振って、捕手の仕事をして、試合前のミーティングではメモをしっかり取ってね。応援したくなる。そのひた向きさがね」。愚直に黙々と-。そんな姿に誰もが声援を送りたくなる。【桝井聡】