エースが快投で、子供たちに夢と希望を与えた。巨人菅野智之投手(26)が、今季3度目の完投勝利でリーグトップタイの4勝目を挙げた。150キロを超える速球を軸に、広島打線を圧倒。3点リードの7回に天谷に2ランを浴び、41イニングぶりに自責点を記録したが、今季両リーグ最短の2時間3分でゲームを完結させた。広島との首位攻防戦を勝ち越し、再び首位を奪い返した。

 ゲームセットの瞬間、時計の針は午後4時4分を指したところだった。菅野が、今季3度目となる完投勝利でリーグトップタイの4勝目をマーク。子供たちの夢の時間を今季両リーグ最短の2時間3分で完結させた。「試合前から、子供たちが『菅野、頑張れ』と声を掛けてくれたので頑張れた」。子供たちに、エースは感謝の言葉を届けた。

 107球に、エースのすごみを凝縮した。150キロを超える速球、ワンシームとパワーで圧倒すれば、スライダー、カーブ、フォークと巧みな技で翻弄(ほんろう)。7回に「欲が出た。小林(誠)と反省会をします」と天谷に2ランを浴び、41イニングぶりに自責点を記録したが、9回2死一塁では痛打された速球で借りを返した(結果は二ゴロ)。

 少年時代の記憶と言えば「野球」だった。幼少期から、父隆志さんと二人三脚で野球に没頭。小学校低学年の時、誕生日に贈られたのはアニメ「巨人の星」のビデオ集だった。朝練、居残りトレと猛特訓の日々。アニメのシーンで「火の玉ノックを見た時、自分もいつかやるんだと本気で思った」と今では笑えるが、野球と向き合った時間は誰よりも多かった。

 菅野 こどもの日の思い出ですか? ゴールデンウイークは、野球をしていた記憶しかないです。

 “思いこんだら、試練の道”を地で突き進んだ。小学生の時、父から課された特訓は「空き缶当て」。バッテリー間の距離で置かれた缶を目がけ、何度も腕を振って、習得したのは球界屈指と評されるコントロールだった。「原点とも言える練習です」。この日も3度目の無四球完投で、計57イニングを投げ、四死球はわずかに3。精密機械の域に達した。

 完投を誓って、結果で示した。直近2試合では、リリーフ陣が奮闘。「何とか最後まで投げようと、最初からマウンドに上がった」と、今日6日の中日戦でプロ初先発のルーキー長谷川に最高の形でバトンを渡した。広島との首位攻防戦を勝ち越し、首位を再奪取。子供たちに夢と希望を与えるとともに、外は十分明るく、早めの帰宅で練習する時間さえも、エースはプレゼントした。【久保賢吾】

 ▼菅野が10奪三振、無四死球完投で4勝目。前回の阪神戦でも12三振を奪っており、2試合連続2桁奪三振は自身初めて。2桁奪三振の無四死球完投も初めてだ。今季の菅野は57イニングを投げ、四死球を与えたのが3月25日ヤクルト戦の2回(1死球)4月13日ヤクルト戦の9回(2四球)だけ。昨年まで連続無四死球は17イニングが最長だったが、今季は3~4月に30イニング連続無四死球、現在も4月22日から24イニング連続無四死球中と、抜群の制球力を見せている。