プレーバック日刊スポーツ! 過去の8月27日付紙面を振り返ります。2002年の3面(東京版)では、ダイエー秋山幸二外野手の現役引退表明会見の様子を報じています。

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 現役最年長野手のダイエー秋山幸二外野手(40)が02年8月26日、今季限りでの引退を表明した。福岡ドーム(福岡市中央区)で記者会見を開き、持病の腰痛で十分なプレーができなくなった上に「残り試合をやっていく上で、若い選手の邪魔になる」と理由を口にした。西武、ダイエーの2球団に所属し、10度のリーグ優勝、7度の日本一を経験した。通算400本塁打、300盗塁以上の記録を残す史上屈指の「アスリート」に、球団は将来の指導者として考えていることを打診済みだ。秋山も今後は海外留学などを視野に入れ、第2の人生をスタートさせる。

 会見場に現れた秋山の目は潤んでいた。プロ22年。通算2187試合出場。悔いはない。「何から話していいのか…」。数え切れないほどの思い出が脳裏に浮かんだ。「6月から心・技・体のバランスがとれなくなった。そのころから嫁さん(千晶夫人)と今年が終わりかなという話をした。優勝を目指していこうという気持ちでやってきたが、優勝が現実から遠のいて、気持ち的にもこれから先やっていくことができなくなった」。西武、ダイエーで10度のリーグ優勝、7度の日本一を飾ったスラッガーは時折言葉を詰まらせた。

 抜群の打撃センス、守備力、走力で一時代を築いた。85年から9年連続で30本塁打以上をマーク。87年には43本塁打でタイトル獲得した。89年には打率3割1厘、31本塁打、31盗塁の「トリプル3」をマーク。90年には51盗塁で盗塁王にも輝いた。99年、史上2人目の「通算400本塁打・300盗塁」達成。00年には2000本安打で名球会入り。「ここまで来るとは思ってなかった。これが秋山幸二の目いっぱい。満足している」。震える口元から笑みが広がった。

 近年は体力の衰えとの闘いだった。01年は春先に右肩痛に襲われ、18年ぶりの開幕2軍スタートだった。今季はさらに持病の腰痛が悪化。「今年は腰がいい時期がなかった」。シーズンに入り、座骨神経を圧迫する腰椎椎間板ヘルニアを患った。「オレにとっては守れなくなったときが辞めるとき」と話していた秋山に「引退」の2文字がちらつきはじめていた。

 引き際は、チームを思う男ならではのものだった。この日の出場選手登録抹消も秋山からの申し出。チームはすでに優勝争いから脱落。若返りを図るチーム事情を考慮し「若い選手の邪魔になるから」。99年からダイエー初の主将に就任した男らしかった。球宴は18年連続でファン投票選出。ファンに愛されていた。

 球団は99、00年のリーグ連覇の立役者としての功績に引退試合の実施を検討。すでに、将来の指導者候補としても打診済みだ。九州出身に加えて抜群の人気、認知度から幹部候補生と位置付けている。秋山自身も「いずれは野球界のために何らかの恩返しをしたい」。ダイエーに籍を残すかは最終決定されていないが、来年から米国でコーチ留学する案も浮上している。「しばらくはボーッとするよ」と秋山は言った。通算437アーチを放った現役生活は終わりを告げた。が、第2の野球人生は幕を開けたばかりだ。

※記録や表記は当時のもの