死球禍を乗り越え、自身ワーストのトンネルから脱出した。ヤクルト山田哲人内野手(24)が巨人戦で22打席ぶりの安打をマークした。第4打席の6回2死満塁で、前回対戦で死球を受け、故障で戦線離脱の遠因となっていた田原誠から2点適時打。昨季に続く自己最多タイの100打点に到達した。ここまで10戦全敗だった東京ドームでの今季初白星をもたらし、逆転CS進出へ望みをつなげた。

 左翼に陣取るファンから、重低音の「ブーイング」が送られた。1点リードの6回2死満塁。ヤクルト山田の第4打席だった。巨人は左の山口から右の田原誠にスイッチ。その名に、燕党が敏感に反応した。山田の脳裏にも、7月30日の映像がよみがえっていた。

 同じ東京ドームの巨人戦だった。田原誠から左背中に死球を受けた影響で、8月中盤に出場選手登録を抹消された。因縁めいた再戦。前回はすっぽ抜けたシュートが体を襲っており、「逆に恐怖心はなかった。外やろって思った」。カウント1-1から左足を高く上げ、甘く入ったスライダーに深く踏み込んだ。左前へのダメ押し2点適時打。昨季に続いて、100打点目を刻んだ。

 2年連続のトリプルスリーを確定させた6日以降も、マークが緩むことはなかった。11日阪神戦(神宮)では第1打席に岩貞から、徹底した内角攻めの末に左脇腹への死球を受け、打撃を崩した。この日も第2打席に、大竹寛から右手首下に死球を受けた。「焦りとかはなかったけど、大事な期間にチームに迷惑をかけていて、悔しかった」。ようやく田原誠と因縁のリベンジマッチに雪辱し、1試合3発と大暴れした10日阪神戦(神宮)の第4打席以来、22打席ぶりの安打。「残像があった。まだ怖さがある。外角の球でも『ウッと』なることがある」と精神面的にも悩みながら、自身ワーストのスランプから脱出した。

 負けたら、逆転CS進出も大きく遠のいていた。3位DeNAとの4ゲーム差を死守。試合前まで球団ワーストの10連敗中だった東京ドームでこの日、真中監督も祈る思いでルーティンを変えた。「少しでも(流れを)変えないとね」とバックではなく、前からそのまま駐車した。巨人との今季最終戦を勝利で締め、鬼門も脱出。残り6試合で奇跡を起こす。【栗田尚樹】

 ◆トリプルスリー+100打点メモ トリプルスリーは昨年の山田(ヤクルト)と柳田(ソフトバンク)まで10人達成しているが、その年に100打点をマークしたのは50年の別当(毎日)と岩本(松竹)15年山田の3人だけ。山田が昨年記録する前は50年の2人しかいなかった「トリプルスリー+100打点」を、山田は2年連続で達成しそうだ。