プロ初登板から先発した4試合すべてチームの白星につながっている日本ハムのルーキー多田野数人投手(28=2勝0敗)が、不敗神話継続で“悪夢”をぬぐい去る。6日、日本一をかけた昨年の日本シリーズ第5戦で完全試合で敗れたナゴヤドームでの中日戦に先発予定。当時は入団前でチームメートの屈辱は知らないが、ファンの期待を背に、きっちり借りを返すつもりだ。

 “ミスター白星”が因縁の地で快投する。名古屋に移動後、宿舎近くのジムを借りて汗を流した多田野は「チームの勝利に貢献したい。最初から全力で向かっていきたいです」と力を込めた。

 チームにとっては、あの屈辱以来のナゴヤドームだ。王手をかけられ、がけっぷちに追い込まれた昨年の日本シリーズ第5戦。山井-岩瀬のリレーの前に1人の走者も出せなかった。だが、多田野は笑い飛ばす。当時アメリカでプレー中で、日本ハム入団など考えてもいなかった。「完全試合された?

 えっ、そうなんですか」。なんと初耳。さらに「僕はいなかったんで悪いイメージはないです」とニヤリ。敵地へ乗り込むうえで、これ以上の適任者はいない。

 中日とは先月23日に札幌で対決済み。3回、平田への頭部死球で危険球退場となったが「こないだは悪いことをしました。でも攻めはかわりません。(外角に逃げるのは)自分の投球じゃなくなりますから」とキッパリ。振り返ればこのときの対戦は、アクシデントが起こるまで打者7人にパーフェクト投球。八千代松陰高2年時の練習試合が人生唯一のノーヒットノーランという多田野だが、“完全試合返し”の期待すら感じさせる。

 同じく昨年の屈辱を知らない梨田監督も「(試合を)見てないから知らないんだ。ナゴヤドームってどこにあるの?

 」と冗談交じりに余裕の表情。負けを知らない頼れる右腕に、全幅の信頼を寄せている。【本間翼】