<中日3-1巨人>◇18日◇ナゴヤドーム

 惜しい~。中日山井大介投手(32)が、巨人相手にあと3人で無安打無得点を逃した。偉業目前の9回、先頭坂本に左越えソロを浴びて、無念の降板。07年、日本ハムとの日本シリーズで8回までパーフェクトに抑えながら、9回は岩瀬にマウンドを譲ったことは記憶に新しい。チームは6連勝で、2位巨人に0・5ゲーム差と接近した。

 山井の祈りは通じなかった。9回。左翼ポール際に飛んだ坂本の大きな当たり。マウンドで「切れろ!」と必死に願った。だが、三塁塁審の手が回った。山井は左に首を傾けながら、悔しそうにスコアボードを見つめ、苦笑いを浮かべた。記録達成まであと3人までこぎつけながら、無念の降板。それでも、スタンドからは温かい拍手が鳴りやまなかった。

 3年前を思い出しながら「やっぱり8回までしか投げられませんでした。前回のことがあって、確かに頭をよぎった。坂本には完ぺきにとらえられたので、悔しかったけど、僕らしいんじゃないですか」と言った。07年11月1日の日本シリーズ第5戦。8回までパーフェクトに抑えながら指のマメをつぶし、9回のマウンドを岩瀬に譲った。この日は森ヘッドコーチから「代わるか?」と冗談を言われ、笑いながら9回のマウンドに向かった。先頭坂本への3球目。外角を狙ったスライダーが真ん中高めに浮き、ついにスコアボードにHランプが灯った。

 ノーヒットノーランを意識し始めたのは6、7回あたりから。8回には森ヘッドコーチから「あと6つアウトを取れ」と気合を入れられた。「ほかの選手はあんまり声をかけてこなかった」。自然と緊張感も高まっていた。

 1021日(約2年9カ月)ぶりにめぐってきた2度目のチャンス。「あの時は日本シリーズだったし、勝てば日本一という状況で、雰囲気も違った。前は勢いだけだったけど、今のほうが考えてピッチングができているという感じがあった」。記録は逃したが、充実感いっぱいのマウンドだった。

 落合監督も06年中日山本昌(阪神戦)以来の大記録が目前で幻となったことを残念がった。「そんな簡単には記録というのは作らせてもらえないよ。あの時とは全然違う。あの時はギブアップだった。本塁打を打たれたら代えやすいじゃない。でも久々に見たかったね。そのチャンスはあったんだ」。それでも、この日の勝利で2位巨人とは0・5ゲーム差。目の前まで近づいてきた。【福岡吉央】

 [2010年8月19日9時15分

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