<オリックス0-4日本ハム>◇28日◇京セラドーム大阪

 気迫の12球だ。日本ハムのエース・ダルビッシュ有(24)が、今季最終のオリックス戦で2年ぶりに救援登板。4点リードの8回にマウンドへ上がり、代打塩崎に右前打を許したが、1回零封で無失点リレーのバトンをつないだ。チームは快勝し、貯金を今季最多の7として単独3位を死守。0・5ゲーム差で続く4位ロッテが、残り2試合で1勝1分け以下なら、5年連続のクライマックスシリーズ(CS)進出が決まる。

 一夜限りの豪華セットアッパーが、望みをつないだ。中継ぎ待機を志願したダルビッシュが、8回に登場した。安全圏とはいえない4点リード。試合前は「まさか投げることはないだろうと思っていた」と悠然と構えていたが、突如、指名された。1イニングを1安打無失点。無失点リレーへの道しるべとなり、3位を死守して今季最終戦を終えた。

 難しい大役を務め上げた。先頭打者は、この日が引退試合だった代打塩崎。花をもたせる暗黙の了解が球界にはあるが、こちらは真剣勝負。動揺は隠せなかった。「どうしたらいいか、分からなかった」と半信半疑のまま、3球連続の速球勝負で右前へはじかれてしまった。岡田監督の“禁じ手”のような容赦ない一手は、連続でさく裂。代打T-岡田が告げられると、本気モードに突入した。

 「T-岡田が出てきて打たれたらダサイな、と思った」。カウント2-1とし、決め球の4球目は外角へ逃げながら沈むフォークで空振り三振を奪った。坂口、森山の後続2人を、三塁手小谷野の好捕にも後押しされて切った。25日ソフトバンク戦を146球で9回完投し、わずか中2日。「自分でも回復力にビビってます」という超人ぶりを発揮。過去に失敗なしの2年ぶり3度目の中継ぎ登板は、今回も完ぺきだった。

 エースのおとこ気で、決意した。試合前の調整で好感触をつかみ、首脳陣に中継ぎ待機の意向を伝えた。登板機会がないことを想定していたが「自分が(ベンチに)入ることで、何か力になれれば」と身を削ってでも士気を高めた。ブルペンでは2度、肩をつくった。梨田監督は「チームのために戦ってくれた」と、見えない力でも鼓舞した大黒柱に感謝した。最多で借金14と膨らんだ苦闘の1年間。その最終144試合目で、今季最多の貯金7まで積み上げ、まずゴールした。

 人事を尽くして天命を待つ-。土壇場で一時があきらめかけた夢を見られる位置まで、たどり着いた。ロッテが残り2試合で1敗でもすれば、5年連続のポストシーズン進出が決まる。ダルビッシュは「負けてくれっていうのは好きじゃないけれど、いい結果になればいい」と本音を明かした。魂の12球が導く運命は、あとは神のみぞ知る。【高山通史】

 [2010年9月29日11時25分

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