楽天岩隈久志投手(29)が18日、Kスタ宮城で、今オフ初めてのブルペン投球を行った。中腰の捕手を相手に、右打席に塩川が入ってジャスト100球の本格的な投げ込みだった。中盤から変化球も積極的にミックスし、今季から導入される統一球に対する研究も抜かりなかった。「滑る」とされるボールの特性を巧みに利用し、変化球にさらなる磨きをかける。

 代名詞のフォークボールだけではなかった。岩隈はスライダー、カットボールに加え、見慣れぬチェンジアップも投げ込んでいった。「変化球は遊びです」と流したが、セットも交えた内容は本格的で、初投げでは異例の100球に達した。そして直後の「でも、曲がりますよ。いい感じです」のひと言。ここに11年版・岩隈のヒントがあった。

 導入される統一球に対しこんな印象を抱いている。

 岩隈

 WBCで使用したボールに近い。従来よりやや滑る印象があり、やや重い印象を受ける。だが日本は湿度が高く、季節が進むにつれ革が湿気を吸いペタペタしてくる。「滑る」問題は解消していくと思う。

 経験に照らして分析し「ボールの特性を生かし、変化球にはプラスに働く可能性がある。アジャストしていきたい」と続けた。滑る、ではなく滑らせるという発想。優れた感性は一流投手が持つ共通資質だが、もちろん岩隈も例外ではない。

 チェンジアップは積極的に試した。「“抜けフォーク”みたいでちょっと…」と苦笑していた。だが岩隈は変化球を投じる際、直球同様に腕がまったく緩まない技術が突出している。鋭く右腕を振り抜き、最後の最後まで指先で巧みにボールを滑らせたチェンジアップは沈みも、制球も十分だった。研さんを積めば新球となる可能性は十分ある。

 数センチの駆け引きで勝負している。「個人的には、ボールの変更は球界にとっていいことだと思う。芯を外したのにホームランでは、野球本来の醍醐味(だいごみ)から外れてしまう」は、ゴロアウトが身上の岩隈らしい味のある言葉だ。「それほど投げ込みはしないと思う。体さえ問題なければ大丈夫です」。調整ペースは分かっている。究極の技術を探求するキャンプが始まる。【宮下敬至】

 [2011年1月19日7時42分

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