労組プロ野球選手会会長の阪神新井貴浩内野手(34)が、セ・リーグの強行開幕案を食い止めた。プロ野球は15日、セ・パ両リーグの理事会後、実行委員会で25日開幕に関して話し合った。新井選手会長は実行委員会を中断して始まった年金運営委員会に出席し、セ理事会が決めた25日開幕に対して東日本大震災の影響を考慮して延期を要望した。選手会の意思表示もあって実行委員会での結論は出ず、加藤良三コミッショナー(69)が継続協議とした。

 新井会長が、選手会の総意として開幕の延期を申し入れた。実行委員会を中断して始まった年金運営委員会。年金の話し合いを終え、選手会側が切り出した。

 新井

 はたして25日に開幕してもいいものか、延期すべきではないでしょうかというのを伝えた。NPBが考えている、被災者を勇気づけるということは選手会も共有している。だが現在、進行している状況。余震も続いて、被害も拡大している。電力も不足している中で、ナイターを煌々(こうこう)としてもいいものか。(経営者側から)実行委員会で検討します、という返答をもらった。

 この日は実行委員会に先だって両リーグの理事会が行われた。パ・リーグは開幕延期の方針を固めたが、セ・リーグはスケジュール通り25日の開幕を決議。実行委員会の了承を得ようとしていた。

 選手会は、セの強行開幕案に反応した。各球団の選手に対するヒアリングの結果として、延期要望という総意を得た。新井会長は「実際に楽天の選手は家族の不安もある。『生きていてよかった。生きているだけでも』という感覚らしいです」。そんな選手の声を集約して経営側にぶつけた。

 新井

 (日程など)具体的なことは言っていない。対立しているわけではないが、我々選手会はこういうつもりです、と言った。

 選手会は明確に意思表示して退出。再開後の実行委員会は約2時間にわたって紛糾して、最後は加藤コミッショナーが散会とした。

 加藤コミッショナー

 具体的な日取りは継続審議となった。野球を一体として、進めることで一致した。

 選手会側の延期申し入れによって、この日の決着は先送りされた。ただ加藤コミッショナーはセ、パが分離開幕する可能性については「その選択肢は排除しません」と含みを持たせた。セも強行開幕を諦めていない。結論について加藤コミッショナーは「できるだけ速やかに出す」と話したが、この日の時点で12球団が集まる予定は立っていない。どういう形で決着するか、見通しは立っていない。【益田一弘】