<巨人10-1西武>◇19日◇東京ドーム

 やっと援護できた!

 巨人打線が今季初の2ケタとなる10得点で、沢村の本拠地初勝利をアシストした。ここまで新人右腕が投げた10試合の1試合平均得点は1・5点。そんな鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように阿部慎之助捕手(32)と坂本勇人内野手(22)が本塁打を放つなど、主力が打ちまくって14安打。交流戦最終戦で手応えを得て、24日のリーグ戦再開からの反撃態勢が整った。

 本拠地の東京ドームで、巨人が今季初の「2ケタ得点ショー」を演じた。原監督が「こんな勝ち方、今シーズン初めてじゃない?

 つかえているものが、スパンと出たようなね」と称した猛打劇。主役を張ったのは、グアムで自主トレをともにする師弟コンビだった。

 ダブル主演の1人は主将の阿部だった。3点リードの6回無死一塁、打席に向かう前に“ストーリー”を描いた。「引っ張れる球を待とう」。西武牧田の投じた5球目の直球をライナーで右翼席に運んだ。5月18日楽天戦以来の1発。「沢村が投げる時は打てていなかったので、打てて良かった」。中大の後輩を力強く援護した。

 “小道具”を変えて臨んだ打席だった。1発を放ったバットは横浜スレッジのモデル。通常は900~910グラムのバットを使用するが、使用したのは890~900グラム。「落ちるところまで落ちたからね。試行錯誤しながらやっていくしかない」。ミズノの関係者によれば「芯が太く、先っぽがくりぬかれた」バットで快音を響かせた。

 トリを務めたのは坂本だった。8回2死三塁、この日3本目の安打を9号2ランで飾った。4月29日横浜戦以来の3安打以上だったが、この日は坂本にとって忘れられない特別な日だった。07年の6月19日にがんで亡くなった母輝美さん(享年47)の命日。「おかんがおらんかったら、今の自分はない」と感謝する母にささげる猛打賞だった。

 試合後、多くは語らなかったが、登場曲に母への思いがあった。G2の「LETTER~おかんに贈る音の手紙」に変更した。「自分から言いました。まぁ、それはいいじゃないですか」。毎オフ、兄弟で墓参りを続けているが、命日に安打を放ったのは初めてだった。「レギュラーシーズンでも、これが続くように」。打線復活の道しるべを2人の主役がしるした。【久保賢吾】