ヤクルト青木宣親外野手(29)が、今オフにポスティングシステム(入札制度)を利用して大リーグに移籍する可能性が高いことが、28日に分かった。昨年まで強硬に反対してきた球団側が、交渉の席に着く姿勢を見せている。今日29日には、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージが開幕。28日には佐知夫人(28)が長女を出産した。10年ぶりの日本一を置き土産に、シーズン終了後に海を渡る。

 青木が、シーズン終了後に長年の夢だったメジャー移籍に向けて動きだす。大学時代から大リーグ志向が強く、06年の契約更改で初めて将来のポスティング移籍を直訴した。その後も粘り強く、球団側と折衝を続けてきた。昨年まで、強硬に反対してきた球団側が、話し合いに応じる姿勢を見せていることが分かった。

 鈴木正前社長はポスティング移籍を一切認めない方針だったが、6月に衣笠剛球団社長兼オーナー代行が就任。同社長はこの日、具体的な話し合いはこれからとした上で「うちにとって必要な選手だから、聞く耳を持たない、時間を取らないということはない。まず話を聞いた上で、できる、できないの判断になる」と、柔軟な姿勢を見せた。

 今季の青木は、左足首捻挫、左脇腹痛、左肩痛など度重なるケガに悩まされ、7年ぶりに打率3割を割った。その中でもチームで唯一144試合全試合に出場し、4カ月以上首位を守った躍進に貢献した。来年1月には30歳となり、野球選手として節目の年を迎える。海外FA権取得は最短で13年。青木の後継者として、自主トレを共に行ってきた俊足好打の上田が成長。来季は中堅を任せる構想があり、チームを支えた功労者として、球団側もポスティングを認める可能性が高い。

 WBCなど国際大会で活躍した青木の実績は揺るぎない。首位打者3度、200安打2度達成した日本を代表するヒットマンとして、存在は米国でも広く知られている。青木サイドは、米国であれば30球団OKの姿勢で、ポスティングにかかれば獲得に動く球団は複数ありそうだ。

 この日は、都内の病院で佐知夫人が第1子となる長女を出産した。家族の後押しを受け、自らの夢を追う環境は整った。今日29日から、チームは10年ぶりの日本一を目指す戦いをスタートする。28日の練習では「短期決戦ですから、1試合にすべてを出し切るだけ」と言った。今はチームの勝利を最優先に、最後まで戦い抜く覚悟だ。

 ◆青木宣親(あおき・のりちか)1982年(昭57)1月5日、宮崎県生まれ。日向-早大。大学3年秋に首位打者獲得。03年ドラフト4巡目でヤクルト入団。04年イースタン・リーグ首位打者。05年にプロ野球2人目の200安打を達成し、首位打者と最多安打獲得。タイトルは首位打者3度、最多安打2度、最高出塁率2度、05年新人王、06年盗塁王、ベストナイン6度、ゴールデングラブ賞5度。175センチ、80キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸3億3000万円。

 ◆ポスティングシステムのスケジュール

 健康状態の報告書を添付すれば、日本球団は11月1日~翌年3月1日までポスティング要請可能。大リーグ球団は、米コミッショナーによりポスティングされた日から4業務日以内に入札。最高入札額は日米コミッショナーを通じて日本球団に知らされ、日本球団は4業務日以内に受諾するかを返答する。受諾なら大リーグ球団は30日間の独占交渉権を獲得。期間内に契約なら、メジャー契約の場合は大リーグ選手会が契約内容を確認した日から、マイナー契約の場合は米コミッショナーに契約内容を報告した日から、5業務日以内に入札金を支払う。契約不成立の場合、翌年11月1日まで再ポスティングは禁止。入札がない場合は、何度でもポスティングは可能。