巨人阿部慎之助捕手(32)が24日、凍結した路面でスリップして転倒した女性を救助し、119番通報していたことが分かった。都内の自宅から川崎市のジャイアンツ球場に向かう途中、ミニバイクで走行中の50歳代の女性が転倒したのを発見。車を止めて、運転していた専属マネジャーとの“連係プレー”で救急車を呼んだ。東京都心で6年ぶりに4センチの積雪を記録するなど首都圏では雪の影響による事故が多発した。慌ただしい朝の通勤時間帯に、巨人の主将の紳士的行動が光った。

 真っ白に染まったジャイアンツ球場に、いつも一番乗りの阿部が、なぜか遅れて現れた。この日はキャンプ荷物の積み込み日。午前10時過ぎになって、専属マネジャーが運転する車で到着した阿部は「途中でバイクに乗った、おばちゃんが、スリップで転倒してさ」と、心配そうに話した。

 事故現場は川崎市多摩区内の幹線道路(府中街道)。阿部は午前9時前に都内の自宅を出発し、球場まで6キロ余りの地点だった。「信号で止まってたら(専属マネジャーの)岩館が『後ろ見て』って言うから」。緩やかな下り坂の路上でミニバイクに乗った50代女性が路面凍結によるスリップで転倒していた。

 阿部は即座に運転手に車を止めるように指示。さらに、うつぶせに路上に倒れこむ女性のもとにマネジャーの岩館さんを向かわせた。続けて、後方から接近してきた軽トラックを停止させ、多重事故を回避するためにハザードを出して停車するように指示し、同9時37分ごろ、119番通報。カーナビを頼りに正確な住所を伝えた。2人はそのまま現場近くの多摩警察署に向かい、事故を報告した。同40分に宮前消防署菅生救急隊が出動し、事故にあった女性は病院に搬送された。

 女性は幸いにも軽傷で済んだが、事故現場は交通量が多く、カーブになっており、後方からの見通しも悪い。仮に阿部が素通りしていれば、後続の車にはねられていた可能性もあり、岩館さんと阿部の“連係プレー”が人命救助に一役買った。多摩消防署の砥石(といし)消防司令長は「倒れている人がいたら、まずは人命救助をと市民に呼びかけている。模範となる行動に感謝しています」と、頭を下げた。

 自主トレを終え、家路に就いた夕方、女性の無事を伝え聞いた阿部は「大事に至らなくて良かった」と胸をなでおろした。巨人軍は常に紳士たれ-。この日の阿部がとった的確な判断と迅速な行動、そして何よりも人を思いやる優しさは、まさに「紳士」と言える。【為田聡史】