<オリックス0-5日本ハム>◇20日◇ほっともっと神戸

 背負っている男は違う。日本ハム斎藤佑樹投手(23)がプロ初完封勝利をマークし、リーグ単独トップの3勝目を挙げた。オリックス打線を相手に被安打8、自己最多131球の力投。安定した制球力で要所を締め、チームの首位浮上にも大きく貢献した。3月30日の開幕西武戦での初完投勝利に続き、初のシャットアウト勝ち。2年目右腕が輝きを放ち始めた。

 斎藤の代名詞と言えば、縦に鋭く曲がるスライダーだろう。ここまで苦労してきた“伝家の宝刀”を自在に操った斎藤は、もはや無敵だった。今季4度目の先発でプロ初完封勝利。「うれしいですけど、不思議な感覚です。大学の時も(完封は)1~2回しかないので(実際は5回)」。ハーラートップの3勝目を挙げ、チームを今季初の首位に引き上げた。

 我慢比べに、勝った。2回に連打を許して2死一、二塁とピンチを迎えたが、8番斎藤をスライダーで注文通りに空振り三振に仕留め、3回2死一、二塁では4番李大浩を同じく外角スライダーで中飛に打ち取った。「最初の1点は取られたくなかった。カード頭を任されている投手として、そういう意地はありました」。ボール球になる変化球をうまく振らせ、四隅に散らした真っすぐとのコンビネーションもさえた。7回終了後、吉井投手コーチから続投するかどうか聞かれ、「まだ行きます」と言い切った。

 前回登板の13日楽天戦では、ともに高校時代、甲子園を沸かせた田中と投げ合い、6回0/3を2失点(自責は1)で今季初黒星を喫した。序盤は体が浮くような感覚が抜けず、投球フォームのばらつきに苦しんだ。「調整法に問題があるのかもしれない」。登板翌日に50メートルの遠投を取り入れ、疲労回復と投球フォームの修正を図った。

 「少しずつだけど、佑ちゃんは進歩しているよ」。吉井コーチが口癖のように言う言葉だ。昨年との大きな違いは、ボールの回転数にある。縫い目への指のかかり具合や、リリースポイントといった細かな動きを、二人三脚で確認してきた。「今の投げ方だと、強くスピンをかけられるリリースへ持っていけているので、これを続けてほしい」。この日の最速は139キロ止まりだったが、球速以上に生きた真っすぐが捕手のミットへ投げ込めるようになってきた。

 1年目の昨年は、2連勝後に左脇腹を痛めて離脱。「去年は3勝目が7月だったので、今年は3勝目を早く取りたいというのがあった。この流れに乗っていきたい」。苦い経験を糧に、早々と手にした3つ目の白星は、大きな成長の証しでもある。【中島宙恵】