楽天の新外国人選手アンドリュー・ジョーンズ外野手(35)が米国時間25日未明(日本時間同日夕刻)、暴行の疑いによりアトランタ郊外で逮捕された。同正午前には2400ドル(約20万4000円)を払い、保釈された。球団の調査で判明した原因は「夫婦げんか」。入団に支障はない見込みだが、ジョーンズ本人にも、対応に追われた球団にも、とんだクリスマスになってしまった。

 「ジョーンズ逮捕」。米国発のニュースが日本に伝わった26日朝、楽天球団はひっくり返った。社員は「え!?」と絶句。その時点で報じられていたのは「暴行容疑で逮捕」とだけ。たまたま、渉外担当でもある安部井スカウト部長が渡米中だった。同部長が保釈されたジョーンズ本人と面談。判明した原因は…、行きすぎた夫婦げんかだった。

 クリスマスイブの24日、ジョーンズ夫妻はアトランタの自宅に友人たちを招きパーティーを開催した。お開きの後も夫婦2人で飲み直した。だが、そこから“悲劇”が起きる。ジョーンズとニコル夫人(35)の間で口げんかが始まった。そこまでなら、よくあることで済んだかもしれない。だが、興奮した夫人が「警察に電話するわよ!!」と受話器を手にしたから大変だ。

 深夜1時半ごろ、電話をかける夫人を横目にジョーンズは「冗談だろう」と思ったという。ところが数分後、地元警察が到着。逮捕されてしまった。実は、夫人が通報の際に「夫にDV(家庭内暴力)を受けた」と口にした。米国、特にアトランタのあるジョージア州はDVに厳しい土地柄。そう通報を受けた以上、警察は必ず被疑者を逮捕、連行し事情を聴くことになっているという。25日午前3時45分から約7時間拘置され、同11時ごろ保釈された。

 ジョーンズは「暴力は一切ない」と断固否定。親しい米球界関係者は「夫婦とも、すごく酔っていた」と証言した。連行される夫を見てニコル夫人の方が驚き、今は反省しているという。2人は結婚11年目。子ども2人にも恵まれた。皮肉にも、夫婦で「反DV」の社会活動に取り組んでいるという。酒の勢いとはいえ、笑えない聖夜となった。

 以上の経緯は、あくまでジョーンズ側の話によるもの。球団は今後、夫人側にも確認するが、事件自体は不起訴の見通し。新たな事実がない限り、入団取り消しはしない。ジョーンズは球団を通じ「関係者の皆さま、そして何より日本での私のプレーを楽しみにしてくださっているファンの皆さまにご心配をおかけしましたことを心より反省しております。ご迷惑おかけしまして、大変申し訳ございません」とコメントした。メジャー通算434本塁打と、来日選手では史上最多を誇る男が、来日前から不名誉な話題を起こしてしまった。【古川真弥】

 ◆アンドリュー・ジョーンズ

 1977年4月23日、カリブ海に浮かぶオランダ領アンティル(自治領)のキュラソー島出身。93年にブレーブスと契約。96年8月にブ軍史上4番目に若い19歳3カ月と23日で初昇格。C・ジョーンズ三塁手がチームに在籍し、区別のため「A・ジョーンズ」の名で親しまれた。11歳のリトルリーグ時代と、98年、06年日米野球と計3度の来日歴がある。185センチ、101キロ。右投げ右打ち。家族は夫人と1男1女。今季年俸は200万ドル(約1億6000万円)。

 ◆逮捕者の入国は?

 ジョーンズは来年1月末に来日する。だが、外国で逮捕された直後の外国人が、すぐに日本に入国できるのか。法務省入国管理局によると、入国管理法に基づき判断される。同局担当者は「1年以上の禁錮刑を受けた人は、原則、入国は許可されません」と説明した。今回は不起訴となる以上、入国に問題はなさそうだ。