<オープン戦:DeNA8-2ロッテ>◇14日◇横浜

 DeNA多村仁志外野手(35)は、スタンドからの大歓声をかみしめるようにダイヤモンドを1周した。5回に代打で登場。2死満塁からロッテ植松の137キロ速球を完璧に捉え、バックスクリーン左にたたき込んだ。「いい形で打てました。ハマスタでは久しぶりでしたが、地元の声援があったから。本塁打の中で一番いいグランドスラムでよかったです」と、温かい応援に感謝した。

 トレードで7年ぶりに古巣に復帰した。ソフトバンクではレギュラーとして日本一の美酒も味わったが、一昨年から控えに回ることが増え、ベンチでの準備の大切さを学んだ。「控えでも気持ちを試合に入れること。1球1球見逃さず、集中することの重要性を実感しました」。集中力を保ち、求められる役割を自覚しているからこそ、打てた1発だ。オープン戦ではここまで打率3割8分9厘と好成績を残している。

 多村の姿勢はベンチにも浸透し始めている。ユーティリティーとしてチームを支える嶋村は「試合中の多村さんは話し掛けられないくらい、グラウンドに集中している。自分も1球1球、今まで以上に集中するようになりました」と言う。外野の定位置を確保するまでにはなっていないが、DeNA中畑監督は「常に準備万端で外国人に負けない飛距離を見せてくれた。ラミレス、モーガン、荒波ら外野陣にもプレッシャーを与える存在になっている」と、ベテランの働きを高く評価した。【佐竹実】