<阪神5-6DeNA>◇8日◇甲子園

 50メートル5秒7の俊足が光った。阪神田上健一外野手(26)が快足を飛ばして先制点をもぎ取った。福留の定位置・右翼に入り12年9月19日DeNA戦(甲子園)以来のスタメン出場。約1年半ぶりの大舞台に存在感を示した。

 5回1死一、二塁。二塁走者だった田上は、大和が打った瞬間、スタートを切った。フワッと上がった打球は、レフトとショートの間に落ちた。田上はその時、迷いなく三塁ベースを蹴っていた。

 武器の足にこだわりを持った。まだキャンプ中の高知・安芸。実戦で出塁する度に盗塁に挑戦した。昨年のスタートを切るタイミングから、ほんのわずか遅くした。そうすることで投手に気づかれずに盗塁の成功につながるという。「これまでのタイミングでも盗塁ができることは分かったので、1テンポ遅くしてみた。幅が広がりました」。ランナー田上はコンマ数秒の世界と戦っていた。

 代走での起用が多かった田上が、生き残るために技を磨いた。1軍で活躍するために、泥臭く努力を積み上げてきた。「とにかくチームの勝利に貢献できるよう精いっぱいやろうと思います」。田上の好走塁が敗戦の中で光った。【宮崎えり子】