<阪神1-8ヤクルト>◇7月31日◇甲子園

 もう珍事られない。ヘーボタンを3回も押して、適時打なしの完敗だ。快進撃の7月は、予期せぬ手詰まりで幕を閉じた。阪神は左腕村中に四苦八苦し、7回にマートンの併殺打の間に1点を取るのが精いっぱい。鳥谷敬内野手(33)はプロ初の1試合2併殺でチャンスをつぶした。今日1日は甲子園90歳誕生日。うっぷんを晴らす猛攻でお祝いするしかない!

 お誕生日イブの甲子園も口をあんぐりだろう。89歳最後の日、虎は見せ場なく退いた。満員のスタンドに響くのは、左翼席少数からの東京音頭ばかり。どちらか最下位か分からない戦いは、鳥谷の投ゴロ併殺で終わった。プロ11年目のキャプテンにとって、1試合2併殺は初めての珍事。メモリアルデー前夜の幕を閉じ、和田監督も嘆いた。

 「最初の2点も初回だったんでね。その後、攻撃陣が1点でも2点でも返せば、全く違う展開になったと思うし。投手というより打つ方だな」

 今季未勝利の左腕村中にスイスイと投げさせた。好球必打が裏目に出て、少ない球数が相手の好テンポを生む。直球に差し込まれ、低めのフォームには泳いだ。まともに捉えたのはゴメスの2安打だけ。3点を追う7回は無死一、三塁は絶好機。初球をたたいたマートンの二ゴロ併殺で、1点を返すのがやっとだった。

 「手も足も出ない感じじゃなかったんだけど。タイミングを外されて、芯も外された。1、2、3打席と合ってくればいいけど、同じ事を繰り返した」

 指揮官も首をひねった。つい2日前には同じ左腕の八木に9回途中まで4安打で完封負けしたばかり。緑に染まった聖地で似た光景が繰り返された。巨人杉内を毎度のように打ちあぐねるなど、夏場になって左腕アレルギーが見え始める。関川打撃コーチも「そこ、今苦労してるんだよ」と顔をしかめるしかなかった。

 借金2で突入した7月、ルーキー梅野の奮闘もあって15勝7敗と大きく勝ち越した。ただ、前節広島戦で連続勝ち越しが「6」でストップ。今回は5連敗中だったヤクルトに、本拠地で負け越した。月末最終日、乗れないエースがまた勝てず、打線も4安打とグッスリ…。けん引してきた鳥谷とマートンで3併殺とは、気になる月のまたぎ方だ。

 「終わったことを振り返っても仕方ない。明日からどうするか。しっかりと考えていきます」

 常に前だけを向いていく指揮官は力を込めた。今日1日は世界に誇る本拠地の記念日。六甲おろしの連続で、盛大に祝うと信じている。【近間康隆】

 ▼鳥谷の1試合2併殺打はプロ11年目で初めて。シーズンでは10年の14個が最多で、通算1494試合で114個。1試合4打席で計算すると25試合で1個の併殺打で1カ月に1個のペースと併殺打が少ない選手だった。