<阪神7-5広島>◇8日◇京セラドーム大阪

 阪神の守護神呉昇桓投手(32)が掟破りの「イニングまたぎ」で消火完了だ。8回に2番手福原が2点差まで迫られ、さらに2死一、三塁のピンチを背負ったところで、その名がコールされた。会沢を二ゴロに打ち取って消火すると、9回も当然続投。3者凡退に締め、26セーブ目を挙げた。5月13日米子での広島戦以来、今季2度目のイニングまたぎだったが淡々としていた。

 「自分は抑えることしか考えていなかった。いくぞ、と言われて、抑えることだけ考えた」

 登板がなくても、チームを陰で支える。神宮でのヤクルト戦初戦。調整を行っていたサブグラウンドで呉昇桓は突然ロングダッシュを始めた。江口通訳の財布から小銭を借り、約100メートル先の自動販売機まで猛ダッシュ。コーラとスポーツドリンクを買うと戻ってきた。

 「暑いからみんな元気になってほしかったんだ。笑わせようと思って」

 ダッシュで振られたコーラを開けると泡がふき出した。スポーツドリンクは勝ち星から遠ざかる能見へプレゼント。暑さで無口になっていた投手陣からは笑いが起こった。チームメートの信頼も抜群だ。

 「自分は何もしていないのに(お立ち台に)呼ばれて恥ずかしい」。チームの危機を救った頼もしい男は、あっけらかんと言ってのけた。【池本泰尚】