広島緒方孝市新監督(45)が初カミナリを落とした。秋季日南キャンプ3日目の3日、打撃練習中の松山竜平外野手(29)を呼び止め「気持ちが入ってない!」と叱責(しっせき)した。厳罰練習として、課したのは自らトスを上げる50分800球の地獄の連続ロングティーだった。ダンディー指揮官が初めて見せた鬼の一面。24年ぶりの優勝へ妥協は許さない。

 怒っていた。打撃練習を見守っていた緒方監督が突然松山を呼びつけた。「何のために練習してるんだ!」。ティー打撃中だった背番号37は、1球打ってはしばらく休みの繰り返し。その姿が覇気なく、もったいなく映った。何をしに日南まで来たのか。監督として初めて落としたカミナリにとどまらず、罰則練習までプロデュースした。

 緒方監督

 ずっと見てたけど気持ちが入っていなかった。このメンバーなら、打つことで一番目立たないといけない選手なのに、一番目立っていなかった。それが来年生きる道なのに。

 課したのは連続ロングティーだった。しかも監督自ら素早い動作でトスを上げ、休みなく打ち返す地獄メニューだ。これはキツイ。指揮官はヘタりかけるたびに「オイッ!」とカツを入れ「さっきまで休んでただろ!」と容赦ない怒声も飛ばした。松山はグロッギー状態で何と50分間振りっ放し。約200球の箱が4箱空になった時、ようやく罰則は終了を告げた。

 緒方監督

 守備にも力を入れて疲れてるのも分かる。でもバット持ったら変わらないと。オレは野村(前)監督みたいに優しくない。(今のままだと)来年4打席与えるつもりはない。

 就任後初めて見せた鬼の素顔だった。キャンプ2日間は直接指導もなくじっくり観察。だが屈指のパンチ力を持ちながら、ムラのある打撃で定位置を獲得できずにいる男の欲のなさを見た時、もどかしさが沸点に達した。もちろんすべては期待の裏返し。だからこそ「考え方を変えろ!」と愛情を込めた助言で締めた。

 ここまではホメることが多かった。一転、甘えや妥協は許さない厳しさを示した。信賞必罰で24年ぶり優勝へ。緒方色が鮮明になってきた。【松井清員】