<東京6大学野球:慶大6-1早大>◇最終週初日◇28日◇神宮

 慶大が早大に快勝、2季ぶり33度目の優勝に王手をかけた。同点の6回裏無死満塁、途中出場の鈴木裕司内野手(3年=慶応)が中前に勝ち越しの2点打を放つと、1死から2ランスクイズ含む2連続スクイズで一挙5点。主砲の4番伊藤隼太外野手(4年=中京大中京)が無安打に終わるなどチーム5安打でも、小技、足技で突き放した。慶大はあと1勝すれば92年秋以来、37季ぶりの完全優勝となる。

 主砲が打たずとも勝つ。明大戦までの今季11戦中2ケタ安打5度、1試合平均9安打を誇った慶大打線が5安打に封じられた。その象徴でもある伊藤も無安打に終わった。それでも終わってみれば5点差の快勝だった。決勝打の鈴木裕は「伊藤さんがダメだったときはカバーしよう、という気持ちがある。いつも頼りっぱなしだったので良かった」と笑顔を見せた。

 一気の速攻を見せたのは、6回裏だった。鈴木裕は早大・有原の代わりばな、初球をたたいた。2点を勝ち越した後の1死二、三塁からは、1番辰巳だ。1ボール2ストライクと追い込まれてから、スクイズを決めた。野選で一塁に残り、2番金田の初球に二盗し再び1死二、三塁とチャンスを拡大。金田が2球目に一塁側へスクイズを決めると、二塁走者の辰巳も三塁を回った。「一塁を見たら(捕球した一塁手が)投げているのが見えたので、行けると思った」と迷いなく50メートル走6秒1の俊足を生かし、ダメを押した。

 江藤省三監督(69)の采配の妙があった。辰巳へのスクイズのサインは「決めていたわけじゃないけど、『打て』(のサイン)なのに打たなかったから」と直感的に出したもの。決勝打の鈴木裕は6回表の守備から出場させていた。64年ぶりの春連覇へあと1勝とし、江藤監督は「連勝以外は考えていません」とこの日の速攻のごとく、一気に勝負をつける。【清水智彦】