<東京6大学野球:法大3-2明大>◇第7週初日◇20日◇神宮

 法大が明大に競り勝ち、7季ぶりの優勝に王手をかけた。エース三嶋一輝投手(4年=福岡工)が無四球8奪三振で4安打2失点完投。2試合連続で9回に152キロをマークして、今季3勝目を挙げた。防御率はリーグで唯一、0点台をキープ。今秋の成長で、ドラフトの外れ1位候補に急浮上した。法大は今日21日の2回戦に勝つと44度目の優勝が決まる。明大は優勝の可能性が消滅した。

 三嶋は最後まで冷静だった。9回2死二塁、3番小川に適時打を許して1点差に迫られたが「1点はいい。あたふたしないように次を抑えれば」と切り替えた。4番岡大を132キロのスライダーで三振にきり、1年春以来の優勝に王手をかけた。「調子はあまりよくなかったが、序盤に打線が点を取ってくれて楽に投げられた」と涼しげに143球を振り返った。

 少ない球種の中で緩急を生かした。3回までに3安打を許すと「調子が良くない時は力むので、脱力してスライダーを使いながら低めを意識した」。球種はフォークを1球投げた他、直球とスライダーだけ。それでも同じ球種で10キロ以上の球速差がつくよう、力の入れ具合を1球ごとに変えた。4~8回は完全投球。安定感抜群だった。

 1年秋にリーグ史上最速の155キロをマークした右腕も、その後は5季で5勝と伸び悩んだ。上体の強さに頼った力任せの投球で、素質に見合う結果を出せなかった。転機は今春。初めて右肘を痛めたが、戦列を離れる間にフォームを確認。バックアップに回った江頭英治外野手(4年=佐賀北)に指摘され、下半身重視に変更した。

 今秋は先発に救援にフル回転し、7試合で3勝0敗。下半身の安定で31回1/3で37三振、6四球と球威、制球ともに良化した。プロの評価は急上昇し、DeNAは外れ1位候補にリストアップした。河原スカウトは「力が抜けていて、春より全然いい」と感心。阪神平塚スカウトは「丁寧に投げている。外の制球がいい」と話した。

 今日21日の2回戦に勝つと、7季ぶりの優勝が決まる。「しっかり勝って自力優勝したい。疲れは関係ない。明日もいけます」と連投にも意欲を見せていた。【斎藤直樹】

 ◆三嶋一輝(みしま・かずき)1990年(平2)5月7日、福岡県生まれ。幼稚園年中から小6までサッカーの福岡ドリームズに所属。小6の夏に怡土(いと)少年野球クラブで野球を始める。福岡工では高3春に九州大会優勝。176センチ、75キロ。右投げ両打ち。家族は両親と妹2人。父一彦さん(49)は福岡大大濠の主将として楽天森山良二投手コーチと甲子園出場。