1月いっぱいで新日本プロレスを退団した中邑真輔(35)の壮行試合で、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(28)の涙が印象的だった。1月30日、後楽園ホールで行われたラストマッチは、超満員のファンと、新日本の選手、スタッフが一体になって中邑を送り出そうと、感動的な空間をつくりあげた。
メーンの試合も終わり、中邑のあいさつの後で、リング上に、中邑のTシャツを来たCHAOSの仲間たちが登場。「中邑さんを泣かそうと思って」と言う仕掛け人のオカダが、1番最初に泣きだした。オカダは、中邑を肩車してリングの周囲を1周。中邑の顔もくしゃくしゃだった。
オカダと中邑の出会いは、05年8月。新日本から棚橋とともにメキシコ遠征に来た中邑に、デビューしたての若手レスラーだったオカダは、プロとしてのアドバイスを受けたという。その後オカダが新日本入りしてからも、中邑に何かと気にかけてもらった。ヤングライオンで5番勝負に挑む際のアドバイスは今も忘れない。「インタビューで『もっと大きいこと言えよ』って言われたんです。だから、全勝してIWGPに挑戦します、って言いました」とオカダ。ビッグマウスの起源は、中邑のアドバイスにあったのかもしれない。
CHAOSに入ってからは、ともにすごす時間も長く、家族以上の付き合いになった。「本隊に比べたら、みんなで何かやるということが多かったですね。食事もたいてい一緒でした」という。深い絆で結ばれた先輩の旅立ちに、オカダは思わず普段の心優しい青年に戻ってしまった。
中邑の決断についてオカダは「中邑さんがまさか(WWEに)行くとは思っていなかった。(WWEとは)一番真逆の人だと思っていた。人の考えは分からないですね」と、本音を語った。オカダ自身のWWE行きの可能性を尋ねると「100%ないとは言いませんが、考えていませんね。ボクは新日本がいい。中邑さんが出ちゃったからこそ、ボクしかいないでしょう。今は、新日本でなきゃ。オレがいなきゃダメ」と、中邑無き新日本を盛り上げる決意を話した。
中邑というプロレス界で唯一無二のエンターテイナーを失った新日本だが、だからこそ、2016年のオカダに注目したい。普段は目立たない、心優しい青年が、リング上では比類なきパフォーマンスでファンを熱狂させる。オカダの進化が新日本を、プロレス界を新たなステージに引き揚げる。【桝田朗】

