夏巡業が、全国各地で開催されている。連日大盛況。だがその形式は、今と昔では大きく変わったという。

 当時を知る現役の関取が1人だけいる。幕下陥落と現役引退が決定的となっている十両若の里(39=田子ノ浦)だ。関取在位は18年弱。「日本10周はしたんじゃない? 47都道府県はもちろん、各地の主要都市は全部まわったんじゃないかな」と、巡業のことは誰よりも知っている。

 現在は消防法などの関係もあり、会場の施設では火気厳禁のところが多い。昼食には弁当が配られ、その日の巡業が終わるとバスに乗り込んで次の巡業地へと向かう。だが若の里が巡業に出始めた90年代は、移動は主に列車。タクシーなどで駅まで乗り付けても、改札を通ったり、電車やバスに乗り込むのは親方、横綱、大関、関取、若い衆の順と決まっていた。また、会場では必ずちゃんこを作り、そこら中においしそうな香りが立ちこめていたという。「当時は炭火だった。火をおこすのが新弟子の仕事で、火力が必要だから炭が燃えたぎるぐらいやってましたよ。これが大変なんだ」と懐かしんでいた。

 現役としての巡業は、恐らくこれが最後になる。「昔と今、両方の巡業を経験できた。本当に良かったですよ」。19日、20日には地元の青森で、多くのファンが待っている。【桑原亮】