東京のど真ん中、それもオシャレな商業施設ビルの1階ロビーに、よもや土俵が出来るなんて…。ウソのような場所が、実現されているんです。JR東京駅前の高層ビル、JPタワー。以前、東京中央郵便局があった場所、といえばピンと来る方も多いのでは。

 通称KITTEと呼ばれるビルの1階で「はっきよいKITTE」と題したイベントが29日まで開催されている。ブランド物を扱うブティック、レストランが集まる洋風の趣たっぷりのオシャレな施設に、純和風の相撲という異種混合の取り合わせ。これが成立するのも、昨今の相撲人気の一端を示すものだろう。

 12日の開幕イベントには、鳴戸親方(元大関琴欧洲)とタレントの筧美和子が登場し花を添えた。日本の古き伝統文化と欧風文化の融合に、主催者側も「双方と来場者の方をつなぐことをコンセプトにしています。国技の魅力や文化を身近に接してください」と話す。

 土俵周囲のディスプレーには、来場者の足を止めるユニークな展示もある。一般人と力士が1食で食べるご飯の量の違いを、茶わんなどで比較。力士の腹を模した模型に手を触れると、その感触に「おーっ」と思わず声が漏れる。自撮りの顔写真で、自分のしこ名が命名される「すもう撮りカメラ」には、長蛇の列が出来るかもしれない。ちなみに筧美和子は「美和の富士」と命名され、ちょんまげ姿の合成写真が作成された(写真)。

 現在、大すもう展、相撲絵切手パネル展が29日の最終日まで開催されている。27日には臥牙丸と豊ノ島を招いてのトークショー、そしてクライマックスの29日には「大相撲KITTE場所」を開催。午後3時からの第3部では、土俵入りと実際の取組が行われる。目の前の至近距離で見られる1階座席券は、館内で買い物した人を対象にした抽選での割り当てとなるが、吹き抜けの2~5階からは立ち見で自由に観戦できる。アトリウムに響き渡る、立ち合いの衝撃音など、本場所でもなかなか感じられない体験ができそうだ。

 当日の力士の支度部屋は、ビル内の会議室を使用。力士の上下階の移動は、荷物用の大型エレベーターを使うなど、狭い空間ながら工夫を施し「こんな場所でも巡業が出来るんだ」という先駆けになるだろう。担当の鳴戸親方も「東京駅の目の前です。東京の方も地方の方もぜひ見に来てください」とアピールした。【渡辺佳彦】