Bブロックでこけしこと本間朋晃(38)が中邑真輔に敗れ、ただ1人全敗の7敗目を喫した。中邑のボマイェに耐え、こけしで果敢に反撃したが、力の差は歴然だった。これで、昨年からのG1ワースト連敗記録も17と伸ばし、残り2試合で初勝利も厳しくなってきた。

 終わったはずの本間が、むっくりと起き上がった。ボマイェを決めようと、ロープ際で体を震わせていた中邑に、ダイビングヘッドのこけしロケットを突き刺した。それが、最後に残された力だった。次のワザを仕掛けようと、ロープへ走ったところに、カウンターのボマイェをもろに受けた。会場の悲鳴とともに3カウント。またも、本間は勝てなかった。

 「オレは、オレは、オレは勝てないのか。こんだけの期待を背負っても勝てないのか」。インタビュー席の前に倒れ込んで、本間は言葉を絞り出した。地元に近い仙台を始め地方で大人気を博した本間だが、ホームグラウンドの応援はレベルが違った。中邑をして「後楽園の磁場が狂ってんな。正直紙一重だったよ」と言わせたほど、本間への応援はすさまじかった。

 レスラーとしての質、ファッションセンス、手足の長い体格と、すべてが本間とは正反対の中邑だった。その中邑に、体につけているオイルのことで「反則だろう。ヌルヌルで気持ちが悪い」と前日に言われた。この日も、中邑から、あからさまにオイルを嫌がるしぐさで挑発された。「そんなことでへこまないですよ。オレは顔がしょぼいんで、オイルは体が黒光りするようにという美意識です」と本間は言った。

 ボマイェで何度蹴られても、大技でマットにたたきつけられても、こけしは起き上がった。オカダ、後藤、中邑とトップレスラーには歯が立たないまでも、善戦を演じるまでになった。「オレを応援してくれる後楽園で、次は絶対勝つ」。12日の石井戦に、本間は全てをかける。【桝田朗】