プロレスラー新崎人生(44=みちのくプロレス)が、東日本大震災の被災地復興へ旗揚げした。自ら経営する仙台市泉区の「徳島ラーメン人生1号店」が営業を再開。2日目の19日、午前11時の開店直後から30席の店内が満席となった。昨年3月9日にオープンし、1周年を迎えた直後に被災。仙台市内はライフラインが復旧しきれておらず、食料品も品薄な状況が続いており、新崎は「1日でも早く温かいものを提供したかった」とスピード開店に踏み切った。

 宮城県内では食材を調達できないため、徳島市から麺やスープ、肉類を新潟へ空輸。運送業者の軽トラックで仙台市の店舗へ搬入した。足りない食材は山形県まで買い出しに行くなど経費はかさむが、ラーメン580円の値段は据え置き、米不足でライスを提供できない代わりに、替え玉を無料で食べ放題にした。今日20日には、同市太白区の2号店も営業を再開する。

 来客数は1日平均約800人で、震災前に混雑した祝日と変わらない盛況ぶり。新崎は「ラーメンを召し上がった方から『助けられました』と言われて…」と声を震わせた。

 従業員40人の中には、家族の安否が分からない人もいる。1号店の赤石沢一善店長(35)は、震災直後から福島県相馬市在住の弟卓也さん(28)と連絡が取れていない。それでも、不眠不休で準備を進めた。

 「自分ではなく、誰かのために何ができるか。被災地の誰もがそう考えている。まだ、リングの上から元気づける時期ではない。生きるので精いっぱいですから」。新崎は3月の出場予定試合をすべて辞退。復興への闘いに集中する。【山下健二郎】