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 FINAL>◇16日◇東京・有明コロシアム◇バンタム級日本トーナメント決勝戦

 「闘うフリーター」所英男(33=リバーサルジム武蔵小杉

 所プラス)が、初代王者となった。決勝で元DEEPフェザー級王者の今成正和(35=チームローケン)と対戦。2回に右フックで尻もちをつかせるなど打撃で優勢に立ち、2回判定3-0で勝利した。3位決定戦は大沢ケンジが藤原敬典を判定で下し、決勝進出の2選手を含めた3人が、今秋に開催予定の世界トーナメントに出場する。

 プロ格闘家として初タイトルを手にするため、所は両拳に執念を込めて振り抜いた。「日本一になるチャンスは、自分の人生でもうない。結果を出したかった」。序盤から打撃に徹すると、2回には今成の左フックに合わせて右ローキックを蹴り込み、続けざまの右フックで尻もちをつかせた。「足関十段」の異名を取る相手にグラウンド勝負へ引き込まれても「まともにやり合ったら勝てない」と振り払って立ち上がり、勝ちに徹した。

 プロデビューから約10年。「僕はいつも壁を感じている」とストイックに鍛錬を積む今成の背中を見てきた。練習パートナーを務め、食事をともにするなどプライベートでも親交が深い。今月10日に行われた奈々夫人(32)との結婚式にも、決勝での対戦が決まる前に招待状を出していた。所は「無理をせずに欠席してください」と今成に伝えたが「それはそれ、これはこれ」と出席してくれた。「人間としての懐の深さを感じた」という。「試合に勝って勝負に負けたと思う」。悲願のタイトルを取ってなお、厳しい自己採点をつけたのも、尊敬する先輩であり、ライバルとなった今成の存在があるからだ。

 9月開催予定の世界トーナメントに、日本王者として挑む。準優勝で出場する今成と再びしのぎを削るチャンスは残っている。「まだこれから。決勝で今成さんとやりたい。次はやり合います」と誓った。自ら経営するジムをオープンし、挙式にトーナメント戦と多忙な日々を送ってきた。所を練習に集中させ、雑用を買って出てくれた夫人にも、1日遅れの誕生日祝いを届けられた。「これまでのことを生かしたい」。新王者が新たな戦いへ、歩みを進めた。【山下健二郎】