元世界2階級王者の長谷川穂積(33=真正)が、IBF世界スーパーバンタム級王者キコ・マルティネス(28)に挑む3年ぶりの世界戦(23日、大阪城ホール)に勝っても引退する可能性があることが17日、分かった。これまで負けた場合の引退を示唆してきたが、勝った場合でも試合後の気持ち次第で現役を退く選択肢が浮上。「完全燃焼」の覚悟で大一番に臨む。

 ボクシング人生の集大成になる大一番に勝っても、長谷川はリングを去るかもしれない。王者マルティネスに勝って引退する可能性について、否定はしなかった。「それは、まだ分からない。それくらいの気持ちで、やるってことです」。王者になって引退するという究極の選択肢も頭に入れての戦い。それは、究極の覚悟の裏返し。3年ぶりの世界戦へ、強烈な決意の証しといえる。

 2月の会見では、負けた場合について「大好きだと言って終われる」と引退を示唆。だが、勝った場合には「言えないけど、考えてます。考えとかないと、勝ったときに空っぽになるから」と、現役を続ける意向を示していた。ただ、最愛の母裕美子さんが死去した悲しみを乗り越え、世界2階級制覇を成し遂げた10年11月のWBC世界フェザー級王座決定戦を例に「あれ以上の喜び、達成感は2度とない。これから先も、この試合に勝っても…」と、率直な思いも明かしていた。

 集大成として臨む試合後にどんな気持ちになるのかは、長谷川自身も分からない。だからこそ、試合までは、今できることに全力投球する。既に137回のスパーリングを消化し「描いている以上」と胸を張る状態まで仕上がった。

 「勝ったら、また新しい何かが見えてくる」という思いもある。その「新しい何か」を見つけるためにも、まずは3年ぶりの世界戦で完全燃焼する。【木村有三】