WBC世界フライ級王者・八重樫東(31=大橋)が28日、9月5日の同級1位ローマン・ゴンサレス(27=ニカラグア)との4度目の防衛戦に向け、横浜市内のジムで練習を公開した。6月の会見時に「命の危険すら感じる」と話した試合を8日後に控え、力をこめて言い切った。

 「いろいろと考えた結果、行き着いた先はいつもと同じだった。時代、時代で巡り合わせがあるが、ゴンサレスと同じ時代にボクシングをしていたのは幸せなこと。ビッグマッチではなく、ビッグチャレンジ。しっかりものにしたい」

 無敗の最強挑戦者との一戦に向け、強力な援軍も力に変える。大橋会長と懇意の元WBCライトフライ級王者・張正九、元WBA同級王者・柳明佑(いずれも韓国)に加え、元2階級制覇王者・井岡弘樹氏の来場が決定。ミニマム級で2団体を制した大橋会長を含め、世界のベルト計7本、防衛38回という80年代を中心に活躍した軽量級のスター選手が集結する。

 張、柳に代表される、低い重心で相手の懐に入り、しつこく連打を放つ「韓国スタイル」は、八重樫と深い縁を持つ。2階級制覇を達成した13年4月の五十嵐戦の前には、大橋会長から張の試合映像を渡され、「これだ!」と手応えをつかんだ。

 強打のゴンサレスを相手に、中に入るのはリスクが高い。だが、松本トレーナーが「ゴンサレスの動きをまねしてミットを受けていると、気がつくと韓国流になる」と証言する通り、八重樫も「どこかで行かないといけないという思いはある」と覚悟は出来ている。

 ここまで来れば迷いはない。「会長がぶつけてくれた大きな試合。それに応えなければ男じゃない」。八重樫が本能のパンチで勝利をつかむ。【奥山将志】