<プロボクシング:53キロ契約ノンタイトル10回戦>◇25日◇大阪府立体育会館◇観衆8200人

 WBA世界フライ級王者亀田大毅(21=亀田)が、前哨戦でKO勝利を逃した。9月下旬に初防衛戦で対戦する元同級王者坂田健史(30=協栄)が見守る中、ロセンド・ベガ(32=メキシコ)に3-0の判定で完勝したが、ダウンを奪う一方的な展開もKOできずに課題を残した。

 世界前哨戦に完勝した大毅は、見た目には明るかった。だが、言葉の端々には悔しさがにじんだ。ジャッジ2人が10ポイント差をつける大差判定勝ちにも「今日の試合は面白くないな。ただ10ラウンド戦ったってだけ」と厳しい自己評価。3回に左フックと右ストレートのコンビネーションでダウンを奪ったが「まぐれやろ。たいしたことないって」と素っ気なかった。

 明確なテーマがあったからこそ納得できなかった。9月の初防衛戦で対決する坂田と背格好がほぼ同じ相手が打ってきたときに、どう攻めていけるか試したかった。だが大毅が「世界王者相手に判定まで頑張ろうって選手で、来てくれへんかった」と言うように、ベガは消極的だった。試合後恒例の弾き語りは「楽譜忘れてん」との理由で中止になった。実際は大毅が試合内容に納得できず自粛を申し出ていた。勝っても満足できなければ歌わないという厳しさも見せた。

 次戦に迫った坂田との因縁対決に向け「ガンガン来るから打ち合いでしょ」と打ち合いを宣言。「パワーだけじゃ勝たれへん。七変化でも何でもやるよ。練習で鍛えていくしかない」と表情を引き締めた。「これからスタートや」。前哨戦での悔しさをかみしめながら、大毅が坂田との戦いの幕を開けた。【浜本卓也】