<プロボクシング:WBA世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇25日◇東京ビッグサイト

 WBA世界フライ級王者亀田大毅(21=亀田)が「亀田家」の力で「因縁の一戦」を制し初防衛に成功した。挑戦者の元同級王者坂田健史(30=協栄)の攻撃を作戦通りにさばき、判定3-0で完勝した。次戦について大毅は、減量苦から同級王座を返上して1階級上のスーパーフライ級への転向も示唆した。敗れた坂田は完敗を素直に認め、進退については明言を避けた。大毅の戦績は18勝(11KO)2敗。坂田は36勝(17KO)6敗2分け。

 判定勝利を聞いた大毅が向かったのは、坂田がいる青コーナーだった。兄興毅と弟和毅と喜ぶと、すぐに坂田に歩み寄った。「ありがとうございます」。元王者に敬意を払った後も、笑顔は控えめ。「元王者で4度防衛してる坂田選手に勝ててうれしかった。結果は満足しているよ」と冷静に振り返った。

 2月の王座奪取で、気持ちが燃え尽きていた。控室で「夢ってかなうんやな」と周囲につぶやいた。それから1カ月後、兄興毅が王座から陥落し、大毅が亀田家唯一の世界王者となった。そんな状況でも、大毅は模索していた。「おれの夢は世界王者になることやったんや。次の夢?

 お兄ちゃんみたいに3階級制覇とかってのも、そこまで思ってないし。おれの次の夢は何なんやろうなあ」。

 そんな時「因縁の一戦」が決定した。かつて所属した協栄ジムの坂田との初防衛戦。亀田兄弟と坂田は対戦が浮上しては消えただけでなく、リング外で協栄と亀田家が対立を繰り返してきた。「何が因縁なんかな」とピンと来なかったが、サポートを続ける周囲の姿にボクシングに家族で打ち込んできた“原風景”を見た。

 興毅は坂田の日本王者時代からのテープを見直した。手数の多い坂田に、興毅は「止まっていたら手数がくる。プレッシャーをかけたり動いてパンチを外したりするのがテーマやった」と作戦を立てた。セコンドにいた弟和毅は、室温約50度の減量室にも一緒に入ってくれた。「おれのベルトはみんなで取ったベルトなんや。おれだけのベルトじゃないんやって。亀田家にベルトをなくしたらアカン」。大毅の闘志がよみがえっていた。

 興毅の作戦通りに動き、着実にポイントを重ねた。中盤に攻勢に出てきた坂田を迎えていこうとしたが、兄興毅の指示で我慢。流れを手放さなかった。「家族の力。また家族に勝たしてもらったな」と大毅はつぶやいた。

 今後について大毅は「体重もきついんでおやじたちと話し合って決めたい」と王座を返上してスーパーフライ級へ転級することも示唆した。大毅は通常時から約12キロ、1週間前から約8キロを減量する。21歳と成長過程だけに、転級したばかりの興毅も「上げた方がいいとも思うよ」と語った。兄のように2階級制覇を目指すのか、それともV2を目指すのか-。大毅の決断から目が離せない。【浜本卓也】