<プロボクシング:WBA世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇25日◇東京ビッグサイト

 挑戦者の元WBA世界フライ級王者坂田健史(30=協栄)は王者亀田大毅(21=亀田)に判定0-3で完敗した。

 傷口から噴き出す鮮血で視界は閉ざされた。坂田は3回に右目上、9回に左目上を深く切った。「傷で目が見えなくなったが仕方ない」。それでも最後まで執念で前に出た。「期待してくれたたくさんの人を裏切って申し訳なかった。結果はしっかりと受け止めたい」と潔く敗北を認めた。

 スロースターターのはずが、スタートから手数、スピードで上回った。持ち前のスタミナを生かし、さらにピッチが上がるはずだったが、逆に後半は失速。特に9回以降は、大毅に体をうまく寄せられ、攻撃を止められた。そして単発のパンチも浴びた。大竹トレーナーも「テクニックを殺された。細かな部分を研究されていた」と話した。

 亀田兄弟がひまわりなら、坂田は月見草だった。05年に亀田兄弟が協栄ジムに移籍すると「主役」から「脇役」に追いやられた。2人のスパーリングの相手を務め、引き立て役になった。07年に世界王者になった後も、注目度ではかなわなかったが、黙々と練習をこなした。今回の大毅戦も1年近く待たされたが、気持ちは切らさず、忍耐強くチャンスを待った。

 進退を懸けた因縁の一戦。44戦目の30歳は今後については「ゆっくり考えたい」と保留した。だが、持ち前の後半の強さを発揮できずに敗れたショックは大きい様子だった。【田口潤】