日本相撲協会は26日、悪性リンパ腫で闘病中の元小結時天空(36=時津風)が引退し、年寄「間垣」を襲名したと発表した。25日の理事会で承認された。昨秋に病気が判明し、昨年九州から5場所連続で全休。今年7月の名古屋場所は西三段目26枚目まで落ちたが、復帰を目指して抗がん剤治療にも取り組んでいた。周囲によると腫瘍は小さくなり、ジムで体も動かしていたという。番付発表の29日に引退会見を開く。

 闘病生活が始まった昨年10月末から10カ月。土俵への復帰を、病と闘う励みにしてきた時天空が引退を決めた。師匠の時津風親方(元前頭時津海)は「体力の限界もあったかもしれない。(29日の)会見で本人に聞いてもらいたい」と述べるにとどめた。

 体に異変を感じたのは昨年7月ごろ。右脇腹に痛みを覚え、名古屋場所後には「あばら骨のヒビ」と診断された。だが、秋場所終盤は夜も眠れない激痛に襲われて、都内の病院で再検査すると腫瘍が見つかった。「悪性リンパ腫」だった。

 抗がん剤治療の副作用で髪が抜けることを覚悟し、11月の九州場所前には都内でひっそりと“断髪式”を行い、闘いに入った。最初は合わなかった抗がん剤も種類を変え、次第に効果が表れた。今年の初場所後に見舞いに訪れた日馬富士は「『いろんな薬を試して、やっと体に合う薬が見つかった』とうれしそうでした」。腫瘍は小さくなり、ジムで体を動かし始めた。5月に対面した弟弟子の正代は「体はそんなに小さくなっていなかった」と言う。

 けたぐり、二枚蹴りなどの足技を得意とし、小結を3場所経験した36歳。5場所連続の全休で番付を落としても「できたら1回、土俵に上がりたい」と願ったが、かなわなかった。今後は大島親方(元関脇旭天鵬)に次いでモンゴル出身力士2人目の親方として相撲協会に残る。周囲によると、秋場所から仕事に取り組む考えだという。日馬富士は「元気でいられることが何より」とし、正代は「稽古をつけてくれたことで今の僕がある」と感謝した。【今村健人】

 ◆時天空慶晃(ときてんくう・よしあき)本名同じ。1979年9月10日、モンゴル・トゥブ県生まれ。00年3月にモンゴル農大を休学し、東農大へ留学。02年名古屋場所の初土俵から序ノ口、序二段、三段目と昭和以降3人目の3場所連続V。22連勝は史上4位タイ。04年春に所要10場所で新十両。同名古屋で新入幕。07年春に新小結。14年1月に日本国籍を取得した。家族は両親と姉、妹。得意は右四つ、柔道経験を生かした足技。185センチ。