大相撲夏場所で注目の初日、左上腕付近にけがを抱える横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が一方的に敗れた。患部にテーピングをして臨んだ結びの一番で、小結嘉風の右おっつけに上体が浮き、なすすべなく押し出された。稀勢の里フィーバーで始まった今場所、満員札止めの館内に初めて座布団を舞わせてしまい、3連覇に向けて苦しい出だしとなった。

 「ふ~~~」最高位に就く者だけが座ることを許される東の支度部屋の最奥。初めてそこに位置した稀勢の里の口から長く、深いため息が出た。「(左は)悪くないけど、相手が強いから負けたんじゃないですか。相手が上回ったのではないですか」。

 春場所の逆転優勝から49日。左腕の回復具合に注目が集まった結び。結果は防戦一方だった。分厚いテーピングを施した左から得意のおっつけは出ず、差そうとするも、反対に嘉風のおっつけで体が浮いた。右の上手も引けずに後退。苦し紛れの右からの突き落としも決まらず、あえなく押し出された。目の前を座布団が舞う。「我慢してできれば…」。皇太子ご夫妻を迎え、満員札止めの館内からもため息が漏れた。