昨年5月に岩手県内で行った握手会で襲撃されたAKB48入山杏奈(19)が13日、9カ月ぶりに劇場公演に復帰し、いまだに右手が完治していないことを明かした。12月3日の誕生日から2カ月遅れでファンに祝ってもらう入山の生誕祭。切りつけられた右手には約30センチのレースの手袋をはめて登壇した。

 最初からうれしそうな笑顔で踊った。最初のMCでは、まず、観客が自主制作したTシャツやタオルを指して「去年までよりセンスが良い」とジョークで、自ら雰囲気を明るくした。途中でも、デビュー当時の自己紹介キャッチフレーズ「イチゴの国からこんにちは」を再現して、「何だろう、言った後のこの不快なキモチは…」と一人でボケツッコミをするほど、ユーモアをもって振る舞った。終始、いつも通りに笑顔でパフォーマンスした。

 ただ、ラストは一転して、いつもは見せない、言わない本音を吐露した。10期生の同期たちからのお祝いの手紙に感謝したあと、スピーチを始めた。

 入山

 18歳の年は皆さんにご心配をおかけしてしまって。夏ごろ、ずっと入院してて、毎日同じ景色を見て、もう辞めたいなと思ったこともあったし、私の世界は今ここしかないなって思っちゃったこともあって…。今ここでこうして歌って踊っていられることが本当に幸せです。

 まずは、卒業が頭によぎった苦しい休養期間を思い返し、感謝した。

 入山

 正直まだ、突然大きな音や大きな声を怖いなって感じてしまうことがたくさんあります。そんな、まだちょっと弱い私ですけど、今日ここにこうして立てたのは、病院に毎日のように来てくれたスタッフさんや、何事もなかったかのようにくだらない話をしてくれたメンバーがいてくれて、ファンの皆さんが温かい声をかけてくれて。みんながこうして私が帰ってこられる場所を作ってくれたからです。本当にありがとうございます。

 何度も何度も感謝した。そして19歳の抱負を問われると、これまで一切語らなかった現状を明かした。

 入山

 まだ完治はしていないです。ずっと今まで、お仕事の合間をぬって、週3回リハビリに通い続けて、今やっとここまで(右手が)動くようになりました。まだ、たくさん時間がかかると思います。自分の手のことなので、やっぱり活動をしていても、優先順位が手になってしまい、お仕事をお休みすることもあるかもしれないですけれど、私もちゃんと自分の手と向き合って戦っていくので、皆さんも一緒に前を向いて歩いてください。

 静かな決意表明は、鼻をすすりながら聞いていた観客に響き、大きな拍手が返ってきた。ファンからの「おかえり~」との声に、瞳を潤ませて、実感を込めた口調で「ただいま」とほほ笑んだ。

 「本当にたくさんの心配をかけてしまったので、19歳の1年はみなさんに笑顔を届けられたらなと思います」と締めると、女性ファンから「あんにん愛してる~!」と掛け声が飛んできて、「知ってる」とニッコリほほ笑み返し。「それにしても、今まで(生誕祭の応援グッズ)は微妙だったのに(今年は素敵)」と、しんみりムードを払しょくするために、あらためてドSキャラでジョークを言うと、ファンも「おお~い!!」と大笑いでツッコミ。かつての、入山とファンの温かい関係が戻った瞬間だった。

 AKB48グループ高橋みなみ総監督(23)はもちろん、入山とともに傷を負って、一足先に復帰していた川栄李奈(20)も、ポロポロと泣いていた。