<第82回アカデミー賞授賞式>◇7日(日本時間8日)◇米カリフォルニア州ロサンゼルス・コダックシアター

 【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】米女優サンドラ・ブロック(44)が主演女優賞を初受賞した。前日6日には、最もひどい映画や俳優を決めるゴールデン・ラズベリー賞の最悪主演女優賞も受賞しており、最優秀と最悪のダブル受賞は史上初めての快挙?

 となった。また、それぞれ9部門でノミネートされた注目対決は「ハート・ロッカー」が今回最多6冠を獲得し、キャスリン・ビグロー監督(58)は女性として初の監督賞を受賞。大ヒット映画「アバター」は3冠にとどまった。

 ハリウッド史上初の珍事となった。サンドラは前日6日、コメディー映画「オール・アバウト・スティーブ」(原題、日本公開未定)で最悪という評価を得たばかり。

 対してこの日は、受賞経験者のメリル・ストリープやヘレン・ミレンを抑え、「しあわせの隠れ場所」(公開中)での初ノミネートで栄冠をつかんだ。壇上では万感の表情でオスカー像を手にした。「本当に私がもらっていいのでしょうか。一生に1度の経験。女優になるためのさまざまな習い事をさせてくれた母に感謝したい」と感涙した。

 「名前で観客が呼べる女優」に数えられる大スターだが、アカデミー賞とは縁がなかった。アクションやラブコメディーなど、選考対象になりづらい娯楽作品の出演が多かったからだ。だが、親しみやすいキャラクターで人気者になり、ニックネームは「ネクスト・ドア・ガール(隣のお姉さん)」。アカデミー賞の初ノミネートが決まった時は「授賞式に向けて、少し脂肪吸引したほうがいいわね」とジョークを飛ばしていた。

 前日6日は、大物俳優が敬遠しがちなゴールデン・ラズベリー賞授賞式にも出席。受賞作品のDVDを入れたカートを押して登壇し、周囲に配った。「みんなきっとこの映画を見ていないと思う。ちゃんと見て、本当に最低だったかどうかを考えて」。ユーモア交じりに演技力の高さをアピールし、翌7日のオスカー獲得で実力を裏付けた。

 サンドラは96年に自身の製作会社を設立し、プロデューサーを兼ねた女優の先駆けになった。女性として映画業界と戦ってきた代表格が、新たな歴史を刻んだ。